ヤクルト連覇の陰に「ホークアイ」あり キーマンは…伊藤智仁コーチ/調査報道〈3〉

ロッテ佐々木朗希の完全試合に始まり、ソフトバンク東浜巨、DeNA今永昇太、オリックス山本由伸、日本ハムのコディ・ポンセがノーヒットノーランを達成した2022年。長いプロ野球の歴史を振り返っても、1シーズンで5人のノーヒットノーラン(完全試合を含む)達成者が出たのは1940年(昭15)以来。最多タイの人数になりました。快挙5試合の平均奪三振数は9・8個で、四死球数は1・2個。歴代の平均数は奪三振数が6・3個で四死球数が2・4個。無安打試合の記録だけを比べても上回っています。 達成者4人も43年の1度しかなく、過去2度の記録は、1936年にプロ野球が誕生してから10年未満のもの。投手が圧倒的有利と言われた時代でした。今季が「投高打低」と言われるのもうなずけます。しかし…本当に「投高打低」なのか? 本当なら、何が原因なのか? ベテラン記者がデータを読み解き、さまざまな角度からアプローチしていきます。

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ホークアイの投球データと、リリースポイント確認のイメージ。数値と感覚を照合することができる(画像一部加工、ソニー株式会社提供)

ホークアイの投球データと、リリースポイント確認のイメージ。数値と感覚を照合することができる(画像一部加工、ソニー株式会社提供)

トラックマンから移行 映像で立体化

近年の成績を見ても、投手のレベルが上がっているとことは間違いない。その理由のひとつに挙げられているのが、最新機器を使った技術力アップだろう。

近年、テレビ放送時などで「トラックマン」を使い、投手の投げる球の回転数や回転軸、打者の打った打球の飛距離、速度、角度を数値化して伝えている。一般のファンにもおなじみになりつつあり、知っている方も多いだろう。

これまで数値化できなかったものができるようになり、何が変わったのか? データとして管理し、統計を取れるわけだが、人間の手作業で残したデータより、はるかに正確で精密なのは説明するまでもないだろう。

そして、これまではレーダーで数値だけを表示できる「トラックマン」から、映像で立体的な動画で見られる「ホークアイ」に移行している。

チーム防御率に1点以上の改善

映像化できると「こうやって投げたら、こういう数値のボールが投げられた」や「この数値のボールが投げられれば打たれない」という目安が、より具体化できる。

スピードや制球力を上げるためには、どういうフォームがいいのか? ボールの回転数や回転軸を、どうやって投げたら変えられるのか?

直球だけでなく、変化球の曲がり具合なども調整が可能。これまで感覚や目に見える範囲でしか改善できなかった部分が、明確な数字として出ることにより効果的な練習ができるようになる。

昨年、いち早く「ホークアイ」を導入して成功したのが、リーグ2連覇を達成したヤクルトだ。

プロを中心とした野球報道が専門。取材歴は30年を超える。現在は主に評論家と向き合う遊軍。
投球や打撃のフォームを分析する企画「解体新書」の構成担当を務める。