【神戸編】報徳スーパー1年・田村伊知郎の風景…田園、清流、ハンバーグ/連載〈4〉

旅が好きです。日本の全市区町村の97・2%を踏破済みです。その遍歴は取材を担当する西武関係者に興奮されたり、どん引きされたり。かけ算の世の中、野球×旅。高尚な紀行文なんぞ仕立てられませんが、お気楽に不定期で旅します。題して「野球と旅をこじつける」。第4回は兵庫・神戸へ。神戸は神戸でも、海の見えないエリアへ。

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◆田村伊知郎(たむら・いちろう)1994年(平6)9月19日、神戸市生まれ。報徳学園では1年夏、2年春に甲子園出場。立大ではリーグ戦通算43試合登板し10勝10敗、防御率3・19。4年夏に大学日本代表入り。16年ドラフト6位で西武入団。17年5月9日日本ハム戦でプロ初登板。21年9月24日ロッテ戦でプロ初勝利をマーク。6年目の昨季は自己ワーストの3試合の登板に終わり、今季の復活を期した。173センチ、86キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸1000万円。

「思い切ってぶち込みました」の翌日に

小田急沿線で生まれ育った私は少年時代、いつも急行で通過するだけの代々木八幡駅が大好きだった。

駅のホームがカーブしているから。それがなんかかっこいいから。

駅のホームって、あれだけ硬そうなコンクリートって、どうやって曲げるんだろう。ワクワクした。

三つ子の魂百までとはよく言ったもので、神戸電鉄の箕谷(みのたに)駅もカーブしているだけでうれしくなった。

なだらかなカーブと六甲の山々が美しい神戸電鉄・箕谷駅

なだらかなカーブと六甲の山々が美しい神戸電鉄・箕谷駅

電車を降りると濃い緑の予感が漂い、午前中から鈴虫の声がする。ホームの端には、上下ホームを行き来するための踏切がある。かつて“スーパー1年生”と騒がれていた当時16歳の彼は毎日、どんな気持ちでこの線路を踏み、家路についたのだろう。

西武の背番号40、田村伊知郎投手(29)の故郷を訪れたのは、割と衝動的だった。前日の9月23日、しびれる場面で好投しマウンドで雄たけびを上げた。

男は黙って-、のタイプだと思っていた。それが「柘植のリードを信じて思い切ってぶち込みました」と試合後のコメントも熱く、かつ味わい深い。なんだか気になるバックボーン。翌日からの大阪遠征で、ルーツを拝みたくなった。

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1980年11月、神奈川県座間市出身。法大卒、2003年入社。
震災後の2012年に「自転車日本一周」企画に挑戦し、結局は東日本一周でゴール。ごく局地的ながら経済効果をもたらした。
2019年にアマ野球担当記者として大船渡・佐々木朗希投手を総移動距離2.5万キロにわたり密着。ご縁あってか2020年から千葉ロッテ担当に。2023年から埼玉西武担当。
日本の全ての景色を目にするのが夢。22年9月時点で全国市区町村到達率97.2%、ならびに同2度以上到達率48.2%で、たまに「るるぶ金子」と呼ばれたりも。