パニック障害と付き合う阪神小谷野栄一コーチ 手帳、サングラス、心の持ち方/前編

プロ野球の阪神小谷野栄一1軍打撃チーフコーチ(44)は今季から「パニック障害」の持病と向き合いながら、猛虎打線を支えています。現役時代から初のセ・リーグ野球を経験し、しかも人気球団の打撃担当責任者。打線が不振ともなれば誰よりも矢面に立ち、大きなプレッシャーを感じるポジションですが、病気とどのように向き合って責任を果たしているのでしょうか―。指導者として、病気の経験をどのように生かしているのでしょうか―。小谷野コーチ流の“生き方"は、ストレス社会で心を痛めている人たちのヒントになるかもしれません。

2回に分けて連載します。

プロ野球


◆小谷野栄一(こやの・えいいち)1980年(昭55)10月10日生まれ、東京都出身。創価―創価大を経て、2002年のドラフト5位で日本ハムへ入団。「パニック障害」を発症した翌年2007年から1軍に定着し、2009年にはゴールデングラブ賞、日本シリーズで優秀選手賞を獲得。2010年には打点王を獲得するなど活躍し、オールスターにも出場した。現役時代は通算1394試合に出場し、打率2割6分4厘、71本塁打、566打点。14年にはFA権を行使しオリックスへ移籍した。楽天、オリックスでコーチを務め、今季から阪神の1軍打撃チーフコーチ。愛称は「栄ちゃん」。177センチ、88キロ。

■「恥ずかしいことではないと思っています」

日本ハムの現役時代からパニック障害を患い「病気とはうまく付き合っていますよ」と隠すことなく、むしろ堂々と明かす。阪神の重要なポストに就いて、シーズンが開幕して約1カ月。球界の中でも一、二を争う人気球団で、勝敗次第では期待の裏返しで批判など厳しい声も届く。

これまで経験したことがないような舞台で、今の病状や心境はどうなのだろうか。

小谷野コーチ確かに周囲からは『よく阪神のコーチを引き受けたな』と言われます。『相当な覚悟を持ってやらないと叩かれる』とも。

それでも藤川監督から直接、連絡をいただき、現役時代からセ・リーグの経験もないですから、素直に挑戦したい気持ちが強かった。

まだ開幕したばかりで、現状では思ったよりはプレッシャーは感じていないですが、これから感じるのかもしれない。ただ、阪神の選手は能力もありますし、社会人としての礼儀、行動がしっかりしている選手が多い。人気球団ですから、外から見ていた時は、少し浮ついたところがあるのかなと思っていましたが、中に入るとそうではなかった。そのギャップを感じながら、選手たちの成長を感じるのが楽しいです。

今でも朝から気分がおかしい時もありますが、それでいいやと思ってグラウンドに立っています。だから仮に(病気の症状で)吐き気をもよおしたら、吐けばいいと。周りから『ああアイツ、嘔吐している』と見られても、恥ずかしいことではないと思っています。

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野球

平井勉Tsutomu Hirai

Kumamoto

1967年、熊本市生まれ。1990年に入社し、プロ野球の西武、ヤクルト、巨人などを担当。米ロサンゼルス支局時代には大リーグを担当し、野茂英雄、イチローらを取材した。
野球デスク、野球部長、経営企画本部長などをへて現職。著書「清原和博 夢をつらぬく情熱のバッター」(旺文社)「メジャーを揺るがす大魔神 佐々木主浩」(旺文社)がある。