【ナベQがゆく×心身統一合気道/下】人を育てる、指導するときの基本は

今季から日刊スポーツの客員評論家となった元西武GM(ゼネラルマネジャー)の渡辺久信さん(60)が、トップアスリートも指導する「心身統一合気道」の会長を務める藤平信一さん(52)とスポーツ選手の「勝負の間」、パフォーマンス発揮の仕方、集中力の高め方、人の育て方などのテーマで対談しました。西武時代の恩師、元監督の広岡達朗さん(93)から「たくさんの学びがあるから」という勧めで実現。藤平さんはドジャースやパドレス、ソフトバンクなどの“臨時コーチ”経験のほか、相撲の九重部屋など力士も指導しています。巨人の長嶋茂雄、王貞治、広岡さんらV9戦士、西武黄金時代のナインが鍛錬した心身統一合気道。渡辺さんは入団1、2年目以来となる道場へ足を運んで、1日体験入門で「気の重要性」を実感しました。

3回連載の最終話を送ります。

プロ野球

◆渡辺久信(わたなべ・ひさのぶ)1965年(昭40)8月2日生まれ、群馬県桐生市出身。前橋工から83年ドラフト1位指名で西武へ入団。最多勝3度、最高防御率1度、最多奪三振1度。96年6月11日のオリックス戦でノーヒットノーランを達成した。97年オフに戦力外通告を受け、野村克也監督の「再生工場」でヤクルトへ移籍。99年から台湾で選手兼任コーチを務め、01年に現役引退。04年に西武2軍投手コーチ、2軍監督を経て、08年から1軍監督に就任し、1年目に日本一。19年からGM、24年5月から監督代行を兼任。シーズン終了後に辞任、退団した。


◆藤平信一(とうへい・しんいち)1973年(昭48)8月18日、東京都新宿区生まれ。東京工業大学生命理工学部卒業。父光一氏より心身統一合気道を継承し、心身統一合気道会会長。世界29カ国、約3万人の門下生に指導、普及に務めている。慶応義塾大学では、体育会合気道部の師範で、非常勤講師として一般教養の授業で心身統一合気道を指導。著書に「心を静める」(幻冬舎)、「心と体のパフォーマンスを最大化する氣の力」(ワニブックス)など多数。

西武のキャンプで石毛宏典選手らを指導する藤平光一さん(本人提供)

西武のキャンプで石毛宏典選手らを指導する藤平光一さん(本人提供)

◆心身統一合気道自らを律し、相手を理解し、導き投げる武道。その稽古を通じ、心と身体の本来の使い方を習得し、持っている能力を最大限に発揮し、社会に貢献することを目的としている。根幹である気の原理(心が体を動かす)、基本となる姿勢・動作・呼吸、相手を理解し導くことは、あらゆる分野の土台となります。そのための教育・経営・ビジネス・スポーツ・芸術など、さまざまな分野で最前線の人たちが学んでいる。日本全国に道場・教室を有し、定期講習会などで指導者の質の維持、向上に務めている。

教室の方と記念撮影する渡辺久信さん

教室の方と記念撮影する渡辺久信さん

■気を見るという、極めてシンプルなことです

渡辺さんは西武で監督、GMを経験。藤平さんは世界29カ国に3万人を超える会員を抱える組織のトップで、国内の指導者は500人を超えるという。

いかに人を育てるか―。育成に大事なこととは何か。ビジネスパースンにも役立つ、2人の持論を聞いた。

藤平さん人を育てることに関しては、育成の対象であるとか、相手次第で方法はたくさんあります。

何がベストかもよく分からないところがある。ただ、どの分野でも育成は、その人の発している気を見ることです。

渡辺さんなるほど、気を見るとは具体的にはどういうことですか。興味があります。

藤平さん気を見るというと、特殊能力のように言われますが、そうではない。

我々、人間は気を見て生活をしているわけです。

例えば、私が大変、申し訳ないことをして、謝らないといけないことがあったとします。それを(気持ちが込められず)すみませんでしたと言ったら、それは絶対に謝っていないですよね。

でも、これを文字、メッセージにすると「すみませんでした」と謝っています。

ですが、実際には謝っているとは思えない。それは言葉を発するより前に、その人が発しているものを見ているからわかる。

これは決して、謝罪をする気を発していないと分かる。

ちゃんと申し訳ないという気を発していて、それで言葉があっていると、この人は本当のことを言っていると思いますけど、そうでないと違和感が生じる。

閉店間際のお店に入ると、「いらっしゃいませ~」と言われるが、時としてこれは絶対に早く帰ってほしいなあと感じるときがありますよね。

心が静まっているときは、その人が発している気を見ることができている。

だから何か問題があって、大丈夫と聞いたときに、その人から大丈夫ですと返答がきても、本当は大丈夫ではないときは分かる。

それが分かるから、ちょっと話しを聞こうかとか、どんな感じなのとか、手当てができる。

ところが言葉、態度を主体で見てしまうと、大丈夫です、と言ったときに、大丈夫となってしまいますが、実際はすごく問題が起きていたりするわけです。

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野球

平井勉Tsutomu Hirai

Kumamoto

1967年、熊本市生まれ。1990年に入社し、プロ野球の西武、ヤクルト、巨人などを担当。米ロサンゼルス支局時代には大リーグを担当し、野茂英雄、イチローらを取材した。
野球デスク、野球部長、経営企画本部長などをへて現職。著書「清原和博 夢をつらぬく情熱のバッター」(旺文社)「メジャーを揺るがす大魔神 佐々木主浩」(旺文社)がある。