【村元哉中<下>】高橋大輔が教えてくれた――完璧じゃなくていい、楽しく気楽に――

日刊スポーツ・プレミアムでは毎週月曜に「氷現者」と題し、フィギュアスケートに関わる人物のルーツや思いに迫ります。

シリーズ第1弾はアイスダンスの村元哉中(かな、29=関大KFSC)。2014年にシングルから転向し、2018年には平昌五輪に出場。日本のトップ選手として活躍していたところ、五輪シーズン後にカップルの解消を決めました。

全3回にわたってお届けする物語の最後は、結成3季目を迎えた高橋大輔(36)との出会いに至る過程、将来への思いをお届けします。

フィギュア

2021年12月25日、全日本選手権アイスダンス・フリーダンスの演技を終え笑顔で言葉を交わす村元と高橋

2021年12月25日、全日本選手権アイスダンス・フリーダンスの演技を終え笑顔で言葉を交わす村元と高橋

クリスと解消後、タイのリンクで気づいたスケートへの思い

華やかな景色と厳かな建物が調和するバンコクは、いつ訪れても笑顔になる街だった。

幼少期、この場所で過ごした日々の記憶は残っていない。それでも村元にとってタイは、心が落ち着く、お気に入りの場所だった。

「日本に住み始めてからも、何度か長い休みに旅行で行ったりしていました。私のタイ語は1から10を数えられて、ちょっと買い物にいった時に値段を聞くことができるぐらい。それでも現地の皆さんは、穏やかで、すごく優しいんです」

クリス・リードとのカップルを解消し、1人になった2018年。村元は母とタイへ旅行した。大きな目的は姉との再会。同じフィギュアスケートに打ち込み、競い合ってきた次女の小月(さつき)は引退後、タイのナショナルチームでヘッドコーチを務めていた。

シングルからアイスダンスに転向した4年前も、通っていた関大にはスケート場があった。どれほど滑ることに対して気持ちが後ろ向きでも、これまでは日常に「スケート」があった。

姉と再会し、リンクに足を踏み入れた。飢えに似た、不思議な感覚があった。

「2週間以上も氷に乗らないようになると、うずうずとしていたんです」

隣の小月が、そっと背中を押してくれた。

「教えてあげてよ」-

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大学までラグビー部に所属。2013年10月に日刊スポーツ大阪本社へ入社。
プロ野球の阪神を2シーズン担当し、2015年11月から西日本の五輪競技やラグビーを担当。
2018年平昌冬季五輪(フィギュアスケートとショートトラック)、19年ラグビーW杯日本大会、21年東京五輪(マラソンなど札幌開催競技)を取材。
21年11月に東京本社へ異動し、フィギュアスケート、ラグビー、卓球などを担当。22年北京冬季五輪もフィギュアスケートやショートトラックを取材。
大学時代と変わらず身長は185センチ、体重は90キロ台後半を維持。体形は激変したが、体脂肪率は計らないスタンス。