宇野昌磨「冷静ではダメだな」と熱く舞ったSP 記者の頭に浮かんだ19歳のSカナダ

フィギュアスケートの世界選手権(さいたまスーパーアリーナ)で男子2連覇が懸かる宇野昌磨(25=トヨタ自動車)が、23日のショートプログラム(SP)で首位発進しました。

前日22日の公式練習で4回転サルコー着氷時に転倒。右足首を痛めてから一夜明け、好調とはいえない状況下で生まれたのは、いつも以上の「さぁ、頑張るぞ!」という気持ちでした。

長年「練習通りの成果」を求めてきた宇野が、久しぶりの感情で生み出した好演技。2016年から取材してきた記者が、現場で感じたことをまとめました。

フィギュア

〈世界選手権:3月23日男子シングルSP首位〉

SPを終え、メダルを手に笑顔を見せる、左からチャ・ジュンファン、宇野、イリア・マリニン

SPを終え、メダルを手に笑顔を見せる、左からチャ・ジュンファン、宇野、イリア・マリニン

SP首位発進!宇野連覇の舞い

3月23日、SPの演技で力強い表情をみせる

3月23日、SPの演技で力強い表情をみせる

不調に右足負傷…冷静に「熱く燃える」という判断

右拳を振り下ろし、痛めていた右足で衝動のままに氷を蹴った。喜ぶ宇野の言葉は、どこか新鮮だった。

「久々にホテル出発前、自分が『ちょっと緊張しているな』っていうのは思っていました」

グランプリ(GP)シリーズ2連勝、GPファイナル初優勝。さらに全日本選手権も制した今季、宇野は常に冷静な印象があった。

昨季までの過程で、成績はもちろん、ミスのない完璧な演技を追い求めた時期が、一通り過ぎていた。

今季は実力者ぞろいのGPファイナル後でさえ「緊張していなかった」と振り返った。シニア8季目の25歳は最近、成績以上に伸びしろや、スケーターとしてやり残してきた部分に向き合うことを好んでいた。

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大学までラグビー部に所属。2013年10月に日刊スポーツ大阪本社へ入社。
プロ野球の阪神を2シーズン担当し、2015年11月から西日本の五輪競技やラグビーを担当。
2018年平昌冬季五輪(フィギュアスケートとショートトラック)、19年ラグビーW杯日本大会、21年東京五輪(マラソンなど札幌開催競技)を取材。
21年11月に東京本社へ異動し、フィギュアスケート、ラグビー、卓球などを担当。22年北京冬季五輪もフィギュアスケートやショートトラックを取材。
大学時代と変わらず身長は185センチ、体重は90キロ台後半を維持。体形は激変したが、体脂肪率は計らないスタンス。