【鍵山正和 ~哲~〈7〉】生まれた満足感のその先へ 世界選手権へトップギアへ入れる覚悟を固めるまで
フィギュアスケート男子で、北京オリンピックで日本史上最年少メダル(個人銀、団体銅)を獲得した鍵山優真(20=オリエンタルバイオ/中京大)。その指導に就く父、鍵山正和コーチ(51)の哲学に迫る連載「鍵山正和 ~哲~」は、第7回で世界選手権(3月20日開幕、カナダ・モントリオール)へ臨む心境に迫ります。1月の4大陸選手権の優勝で芽生えた感情と、その理由、そして勝利への高ぶりを隠さない優真の姿に決めた覚悟を聞きました。(敬称略)
フィギュア
予想外だった発言
その予兆は全日本選手権前から感じていた。そして、意外性を持ってそれを受け止めていた。
優真の日々の練習に取り組む姿勢が、シーズンの序盤から前半と明らかに変わってきていた。
目を見張るのは量より質。誰に言われることもなく、プログラムの曲をかける回数が増えていった。難易度の高い振り付けの細部の細部まで神経を行き届かせるような姿を目の前に、その根底に高ぶりを感じ取った。
「早い段階でそうなってきたのは驚きではありました」
ケガ明けのシーズンゆえの安全運転から、周囲の予想を上回る速さでギアを上げていこうとしているのが分かった。GPシリーズでメダルに届き、同世代の活躍も刺激の1つにはなっていただろう。
「本格的にスイッチが入ってきたのは全日本の前くらいからですね」
年末に日本一決定戦を2位で終えて、世界選手権の切符をつかむと、さらに加速する中で、また1つ大きな変化も見聞きした。優真は「勝ちたい」という意志を言葉に乗せるようになった。
「勝ちたいという事はあまり聞いたことなかったですね。先輩方、羽生選手や宇野選手を見て育ってきているので、ああいう風になりたいとは言ってはいましたけど。ただ、その中に多分、1番になりたいという思いはもちろんあったとは思いますけど、言葉に出して聞いたのは本当にごく最近ですね」
発信は歓迎している。アスリートであれば至極当然とも受け取る。加えて、フィギュアスケートという競技の特性にも照らす。
「気持ちを自分で口にすることも表現の1つですよね。そういった所から内面も大きく変わることもあると思います」
かねて、持論がある。例えば1つのジャンプを減点なく跳びきることが美しさであるとするなら、姿勢が崩れながらも何かを希求する気持ちを全面に降りきってみせる、踏ん張ってみせるジャンプにも「美」はある。表現というレンジは、もっと奥深いと考えてきた。
いま、優真に勝利への意志が充満することは、そういった意味でも試合に生きてくると確信している。
ケガからの復帰となった今季は、新たな真っ白なキャンバスに色を塗っていく作業と例えていた。その1つがローリー・ニコル、カロリナ・コストナーに師事している芸術性やスケーティング技術だった。1つの所作に込められた細やかな意志を確認する日々は、いつまでも完成が見えない時間でもあり、いまもまだ助言の実現に注力し続けてきた。
その生活の中で、感情面を揺さぶられる事、突き詰めることも多かったのだろう。自らの意志へのアプローチの仕方として、「勝ちたい」という気持ちを自然に演技に押し出していけるようになることも、新たな「色」と言えるかも知れない。
「僕が病気で入院してた頃から、自分でいろいろやっていかなければいけなくなってしまった部分もあって。そこから意識的には変わっていたとは思うんですけど、ただ、『勝ちたい』『タイトルを取りたい』という意思の強さがまた新たに加わって、変わってきた部分は大きいかなとは思いますね」
事実、その望みを現実にしたのが4大陸選手権だった。SPでは今季世界2位の106・82点を記録して首位発進。フリーでも200・76点の好演で、今季世界2位となる合計307・58点をマークした。五輪、世界選手権、グランプリ(GP)ファイナルを含めたシニアの主要国際大会では初の金メダルを、有言実行でつかみ取った。
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2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて17年。25年4月に初の異動で野球部へ配属となりました。競技経験はありませんが、現在は息子が通う少年野球チームで“球拾い”コーチとして奮闘中。記者としても、様々な話題を拾います。ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。クラフトビール好きです。
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