京産大ラグビーが日本一になる日 四半世紀ぶりの早稲田撃破から初優勝への道のり

長い歳月を経て追い続けてきた頂がある。まだ、たどり着いたことはない。2023年12月23日、大阪。ラグビーの全国大学選手権・準々決勝で、京都産業大学は65-28で早稲田大学に勝った。約四半世紀ぶりに伝統校を完膚なきまでに破る快挙だった。今度こそ見たいのである。彼らが日本一になる日を-。

(敬称略)

ラグビー

26年前の記憶~再び訪れた歓喜

【1997年度準々決勝 先発メンバー】

〈京産大〉69-18〈早稲田大〉


京産大早稲田大
1佐藤友孝4年=熊本工大高1石嶋照幸4年=茗渓学園
2野山隆二3年=淀川工2萬匠祐基3年=国学院久我山
3木下剛4年=東海大仰星3山口吉博4年=江戸川学園取手
4池田篤人2年=洛北4中西聡4年=早大学院
5内野聡4年=高槻南5山崎隆司3年=西武文理
6池上王明3年=東海大仰星6井出上敬太2年=西南学院
7岡本宗太3年=花園7沖 覚4年=北野
8平田政喜1年=布施工8吉上耕平4年=筑紫丘
9吉原武則4年=大阪工大高9月田伸一4年=東福岡
10山岡宏哉4年=天理10山崎弘樹1年=日川
11佐藤貴史4年=和歌山工11倉成隆4年=西武文理
12奥 亘4年=八幡工12山崎勇気3年=啓光学園
13鈴木啓明3年=京都西13小森允紘2年=長崎北陽台
14岡田吉之4年=啓光学園14石川安彦4年=日川
15大畑大介4年=東海大仰星15吉永慧侃4年=筑紫丘
2023年12月23日、準々決勝・京産大―早大。 後半、ゴール前の混戦から抜け出した京産大CTB小野がトライを奪い喜ぶフィフティーン(撮影・和賀正仁)

2023年12月23日、準々決勝・京産大―早大。 後半、ゴール前の混戦から抜け出した京産大CTB小野がトライを奪い喜ぶフィフティーン(撮影・和賀正仁)

あの日の大阪はどんよりした曇り空だった。

26年前の遠い記憶である。

薄れることなく脳裏に刻まれているのは、それほど印象的な試合だったということであろう。

1997年12月23日、東大阪市の花園ラグビー場。

全国大学選手権の準々決勝で、京産大は早稲田と顔を合わせた。

初戦で京産大は大東文化大学を、早稲田は同志社大学を破っての8強入り。

よく似た色のため、ともにセカンドジャージーを着ての対決になった。

開始すぐに敵陣に入った早稲田は、1年生スタンドオフのドロップゴールで先制する。

バックスの走力を生かして序盤から攻める早稲田。

その後、ようやく目を覚ました京産大はフランカー陣の出足の鋭さで敵陣に入ると、ゴール前のスクラムで圧倒する。

組み直すこと3度。

最後にインゴールに入ったのはエースで主将の大畑大介だった。

バックスタンドまでぎっしりと埋まった大観衆から、歓声と悲鳴が起きたのを、よく覚えている。

これが、歴史に刻まれる試合の幕開けだった。

高まる期待、さあ次は明治

あれから26年が過ぎた同じ日。

同じ大阪での準々決勝、同じような試合が繰り広げられる。

26年前も、そして今も-。

日本一を目指し、周囲の期待はいや応なしに高まりつつある。

2024年1月2日、国立競技場。

相手は明治大学。

準決勝への挑戦10度目にして、初めて決勝戦にたどり着くことができれば、次なる敵は王者・帝京大学か、それとも関西で鎬を削る天理大学か。

「努力は才能を凌駕する」-

47年も京産大を率いた元監督の大西健は、愚直なまでの「ひたむきさ」でチームの土台を築いた。

歓喜の時よ。

四半世紀以上の空白を経て、ついにその日が訪れようとしている。

【初めて明治に勝った日】2016年12月11日、大阪・花園ラグビー場。明治を破るノーサイドの笛が鳴った瞬間、抱き合って喜ぶ京産大

【初めて明治に勝った日】2016年12月11日、大阪・花園ラグビー場。明治を破るノーサイドの笛が鳴った瞬間、抱き合って喜ぶ京産大

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編集委員

益子浩一Koichi Mashiko

Ibaraki

茨城県日立市生まれ。京都産業大から2000年大阪本社に入社。
3年間の整理部(内勤)生活を経て2003年にプロ野球阪神タイガース担当。記者1年目で星野阪神の18年ぶりリーグ制覇の現場に居合わせた。
2004年からサッカーとラグビーを担当。サッカーの日本代表担当として本田圭佑、香川真司、大久保嘉人らを長く追いかけ、W杯は2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、ラグビーW杯はカーワンジャパンの2011年ニュージーランド大会を現地で取材。2017年からゴルフ担当で渋野日向子、河本結と力(りき)の姉弟はアマチュアの頃から取材した。2019年末から報道部デスク。
大久保嘉人氏の自伝「情熱を貫く」(朝日新聞出版)を編集協力、著書に「伏見工業伝説」(文芸春秋)がある。