【150秒の青春】不登校のあなたに読んで欲しい 「逃げてもいい、生きていればいい」

かつて不登校だった少女は、チアリーディングに出会ったことで人生が変わった。新生活が始まった春。学校に行きたくない、生きているのが辛い-。もし、そんな人がいるなら読んで欲しい。「逃げてもいいんだよ」-。彼女からのメッセージ。(敬称略)

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不登校のあなたへ〈2〉

いじめられた過去
「私は逃げました」

「不登校になった最初の頃は誰にも言えないじゃないですか。

考え込んで、ため込んで、どんどん自暴自棄になっていくんです

生きているのが面倒くさい。

そう思ったこともありますよ」

彼女は今、チアリーディングのコーチをしている。 目の前では4月に入学した高校1年生が加わった新チームが練習をしていた。

仕事を終えてからホールに駆けつけると、私服姿のままで取材に応じてくれた。

学校に行かなくなったのは中学2年生の時だった。

仲が良かったはずの生徒に裏切られ、どんどんエスカレートしていった。

げた箱から上履きを取り出すと中に画びょう、靴底にも刺さっていた。

教室に入ると自分の椅子には虫の死骸。

少し離れたところから様子をうかがっている。

壮絶ないじめ、学校に居場所はなくなった。

誰も信用できず、心を閉ざした時期がある。

そんな10年以上前の辛い記憶を振り返る。

「とりあえず逃げたらいいんですよ。

逃げた瞬間に楽になるから。

『生きているだけでいいや』って。

そう思えるようになったら勝ちなんです。

私は逃げました」

おそらくは親に相談しても、やっぱり「学校に行きなさい」となるかも知れない。

わが子を思ってのことだが、簡単には解決しないこともある。

先生に伝えれば「保健室登校でもしてみようか?」と言われることもあるだろう。

彼女もそうだった。

〝疲れ切った心〟は、それだけでは癒やされないのだ。

1年近くも不登校だったから、分かることがある。

真っ暗な人生は、どこまで進んでも暗いままなのだと。その時はそう思うだろう。

「自分には明るい未来などない」と、そう考えていた少女は、生きていたからこそ、今は自分の好きなことをしている。

チアのコーチとしては楽曲を担当。編成した曲が大舞台に流れ、そのリズムとともにメンバーたちが華麗に踊り、美しく宙を舞う。

そして、今年2月には1人で会社を起こした。

今、暗闇にいるあなたへ―。

伝えたいこと。

チアリーディングは人に元気や勇気を与えてくれる~不登校だった彼女はチアと出会い、時間をかけて自分が好きなことができるようになった(写真はイメージです)

チアリーディングは人に元気や勇気を与えてくれる~不登校だった彼女はチアと出会い、時間をかけて自分が好きなことができるようになった(写真はイメージです)

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編集委員

益子浩一Koichi Mashiko

Ibaraki

茨城県日立市生まれ。京都産業大から2000年大阪本社に入社。
3年間の整理部(内勤)生活を経て2003年にプロ野球阪神タイガース担当。記者1年目で星野阪神の18年ぶりリーグ制覇の現場に居合わせた。
2004年からサッカーとラグビーを担当。サッカーの日本代表担当として本田圭佑、香川真司、大久保嘉人らを長く追いかけ、W杯は2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、ラグビーW杯はカーワンジャパンの2011年ニュージーランド大会を現地で取材。2017年からゴルフ担当で渋野日向子、河本結と力(りき)の姉弟はアマチュアの頃から取材した。2019年末から報道部デスク。
大久保嘉人氏の自伝「情熱を貫く」(朝日新聞出版)を編集協力、著書に「伏見工業伝説」(文芸春秋)がある。