【イチロー大相撲〈27〉】横綱北の富士引退から50年〈2〉まさかの大関昇進、準備していなかった

第52代横綱北の富士が引退してから、今年で50年になる。

この節目に、日刊スポーツの過去の記事や写真で、当時の北の富士さんを3回にわけて振り返る。

北の富士さんにスカウトされて角界入りした三役呼び出し重夫には、よく知る師匠のエピソードを披露してもらった。

連載の2回目は、北の富士さんの「まさかの大関昇進、準備していなかった」。

大相撲

初場所番付発表 連続東正関脇に座り、次期大関争い1番手として年男の北の富士は「おれの年だ」とマスコットの馬を持っておどける(1966年1月8日撮影)

初場所番付発表 連続東正関脇に座り、次期大関争い1番手として年男の北の富士は「おれの年だ」とマスコットの馬を持っておどける(1966年1月8日撮影)

連載2回目は、北の富士さんの大関昇進時の話を紹介したい。

もともと日本相撲協会には、大関昇進を決めるための明文化された内規や基準はない。

勝ち星だけでなく、相撲内容や番付編成上のバランスなどを決め、総合的に判断する。

近年は「三役で直近3場所合計33勝が目安」と言われることが多いが、それも平成以降に自然と言われるようになっただけだ。

北の富士さんが大関昇進を決めたのは、1966年(昭和41年)名古屋場所でのこと。

以下の表は、北の富士さんが入幕してから大関に上がるまでの成績表だ。


場所番付勝敗三賞
1964年1月前1013-2敢闘
1964年3月小結4-11
1964年5月前59-6技能
1964年7月関脇9-6
1964年9月関脇6-9
1964年11月前110-5技能
1965年1月関脇8-7
1965年3月関脇5-10
1965年5月前38-7
1965年7月前28-7
1965年9月小結10-5
1965年11月関脇9-6
1966年1月関脇10-5殊勲
1966年3月関脇8-7殊勲
1966年5月関脇10-5技能
1966年7月関脇10-5
NHKのブースで室伏広治をゲストに迎えて解説席に座る北の富士さん(右)(2004年9月22日撮影)

NHKのブースで室伏広治をゲストに迎えて解説席に座る北の富士さん(右)(2004年9月22日撮影)

NHK大相撲中継で北の富士さんが解説を務めた時、大関昇進の星勘定が話題になると、あまりいい顔はしなかった。

北の富士さんは関脇で直近3場所合計28勝で大関に昇進した(その後、横綱にも昇進しているため、審判部の判断は間違いではなかったといえる)。

今回もまた、北の富士さんにスカウトされて相撲界に入った呼び出し重夫に聞いた。

―昇進時の昔話は聞いたことありますか

「オレらは大関昇進や横綱昇進、そういう話は一切していない。オレらに対して、相撲うんぬんは話さないんですよ。くだらないことはいっぱい話しますけど(笑い)」

―NHK大相撲中継で解説する時も、大関昇進の星勘定はあまり乗ってこない印象があります。呼び出しさんは仕事中だから、大相撲中継は見ませんか

「そんなことないですよ。呼び出し室のテレビで相撲はずっとかかってますから。NHKが呼び出し紹介を特集する時がありますよね。その時に(北の富士さんが)解説に入っていると、オレの時は(解説が)長いらしく。人づてで聞いたりするんですが、褒めてくれたり、太鼓を作ってくれた時の話をしたみたいです」

-太鼓の話とは

「理事長(元横綱北勝海)が横綱に上がる時に、(呼び出しの)太鼓を作ってくれた(買ってくれた)んです。今でも使ってますよ。30万円くらいだったのかな。綱打ちの時に、『太鼓を頼め』って言われて。その話を、何年か前の呼び出し紹介の時に『さっき会った時に聞いたら、まだ使ってるって言ってたよ』という話をしてくれたようです。自分が22か23歳くらいの時かな。宝物ですよね」

大関北の富士(左)の陣頭指揮で恒例の餅つきが行われた。右端は九重親方(41代横綱千代の山)(1969年12月25日撮影)

大関北の富士(左)の陣頭指揮で恒例の餅つきが行われた。右端は九重親方(41代横綱千代の山)(1969年12月25日撮影)

北の富士さんの大関昇進は、事前のムードはまったく盛り上がらないまま、突然決まった。報道陣も準備はしていなかった。北の富士さん本人も、相撲協会からの電話が部屋にあった時には寝ていたほど。

紋付き羽織はかまも用意していなかった。

伝達式の準備もしていなかった。

すべては、ドタバタの中で始まった。

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スポーツ

佐々木一郎Ichiro Sasaki

Chiba

1996年入社。特別編集委員室所属。これまでオリンピック、サッカー、大相撲などの取材を担当してきました。X(旧ツイッター)のアカウント@ichiro_SUMOで大相撲情報を発信中。著書に「稽古場物語」「関取になれなかった男たち」(いずれもベースボール・マガジン社)があります。