【名古屋場所こぼれ話 9日目~千秋楽】あの足を見たら優勝するなんて想像できなかった

名古屋場所は、関脇安青錦の3度目の優勝で幕を閉じました。10勝を挙げて大関復帰を決めただけでなく、負傷を抱えながらも優勝決定ともえ戦を制して、劇的な展開で賜杯を抱きました。

「こぼれ話」では、本場所中の記事に書ききれなかった話題、書くほどではなかったちょっとした話題などをお送りします。

9日目から千秋楽までの「後編」です。

大相撲

ハードルはできない

9日目

8日目は休みだったが、結果はすべて確認する。十両以上の時間帯は、ホテルにてNHKの大相撲中継と、ABEMAの大相撲LIVEを同時に見た。安青錦関が左足の親指を痛めていた。

9日目の朝は、安青錦休場の可能性もあると思いつつ、会場入り。

一番目の審判を追えた安治川親方(元関脇安美錦)に話を聞く。前日の安青錦の様子について「支度部屋で自分でケガのことを話したんでしょう? そこは成長している」と意外な点について触れた。つまり、ケガをして落ち込んで黙り込む、というのではなく、適度に自分を客観視して話ができた点を「成長」ととらえているようだ。

プロの力士とはいえ、病院の休診日にケガの状況を専門的に診てもらえない。トレーナーに来てもらって、患部を診てもらっているようだ。中日を終えて7勝1敗。10勝すれば大関に復帰できる状況にあり、出場の可否・是非を判断するのは、本当に難しい。

名古屋場所9日目、安青錦(右)は上手出し投げで横綱大の里を破る(2026年7月20日撮影)

名古屋場所9日目、安青錦(右)は上手出し投げで横綱大の里を破る(2026年7月20日撮影)

巡業部長の高田川親方(元関脇安芸乃島)には、あらためて今後の巡業方針について聞いた。まだ日程が決まっていない来年の夏巡業以降は、力士たちのコンディションを考えながら過密日程にならないようにしていくとのこと。今場所後の夏巡業についても少し聞けた。これまでのように「幕内力士+十両3枚目以上」でなく、「幕内力士+ご当地力士として勧進元が出場を望む力士」を優先的に巡業初日から帯同するという。

生田目(右)は突き出しで旭富士を破る(2026年7月20日撮影)

生田目(右)は突き出しで旭富士を破る(2026年7月20日撮影)

生田目さんが旭富士さんの序ノ口デビューからの連勝を「25」で止めた。後日、先代伊勢ケ浜の宮城野親方(元横綱旭富士)に聞くと「生田目には本当に申し訳ない言い方になってしまうが」と前置きしつつ「(旭富士が)調子を下ろしすぎ」とも指摘していた。まだこんなもんじゃないと実力を高く買っている。

名古屋おもてなし武将隊の織田信長(2026年7月20日撮影)

名古屋おもてなし武将隊の織田信長(2026年7月20日撮影)

午後3時半に織田信長さんと待ち合わせ。名古屋城での仕事を終えた後、暑い中にもかかわらず、徒歩でIGアリーナまで来てくれた。当初は、室内でのインタビューを予定していたが、IGアリーナと幟をバックに絵作りした方がよいだろうと信長さん側から提案いただいた。何を聞いてもぶれない設定はさすが。聞くところによると、史実などは相当勉強しているという。「明智光秀に言いたいことは?」と聞いても、ちゅうちょせつに答えてくれた。

NHK大相撲中継は、陸上女子100メートル障害の元日本記録保持者・寺田明日香さんがゲスト。後日、映像を見直したが、話が抜群にうまく、表現力豊か。トレーナーが一緒だという大栄翔関は、同じグループラインがあるそうで、ゲスト出演の日だったことも知っていた。「ハードルはどうですか?」と聞いたが「怖くてできませんよ」。この日、幕内実況を担当した三輪アナウンサーは陸上競技も担当している。そんな縁も、寺田さんのキャスティングにつながったようだ。

前日負傷した安青錦関は、初めて大の里関に勝った。支度部屋のモニターでその瞬間を見ていた床山の床仁さんも付け人の皆さんも、信じられないという顔をしていた。支度部屋で、安青錦関の左足を見た。テーピングを取った後だから、患部の様子がよく分かる。親指の付け根から、足の甲のあたりまでがとてつもなく腫れていて、内出血もしていた。いったい、この足は何日目までもつのだろうか。

新会場の座布団なのに、なぜ?

10日目

午前9時33分、エレベーターで4階から1階に下りる途中、「に~し~、たか~や~す~」と呼び出しさんの声がうっすら聞こえてきた。これは誰かが発声練習しているのだろうとピンと来た。

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スポーツ

佐々木一郎Ichiro Sasaki

Chiba

1996年入社。特別編集委員室所属。これまでオリンピック、サッカー、大相撲などの取材を担当してきました。X(旧ツイッター)のアカウント@ichiro_SUMOで大相撲情報を発信中。著書に「稽古場物語」「関取になれなかった男たち」(いずれもベースボール・マガジン社)があります。