【名古屋場所こぼれ話 9日目~千秋楽】あの足を見たら優勝するなんて想像できなかった
名古屋場所は、関脇安青錦の3度目の優勝で幕を閉じました。10勝を挙げて大関復帰を決めただけでなく、負傷を抱えながらも優勝決定ともえ戦を制して、劇的な展開で賜杯を抱きました。
「こぼれ話」では、本場所中の記事に書ききれなかった話題、書くほどではなかったちょっとした話題などをお送りします。
9日目から千秋楽までの「後編」です。
大相撲
ハードルはできない
9日目
8日目は休みだったが、結果はすべて確認する。十両以上の時間帯は、ホテルにてNHKの大相撲中継と、ABEMAの大相撲LIVEを同時に見た。安青錦関が左足の親指を痛めていた。
9日目の朝は、安青錦休場の可能性もあると思いつつ、会場入り。
一番目の審判を追えた安治川親方(元関脇安美錦)に話を聞く。前日の安青錦の様子について「支度部屋で自分でケガのことを話したんでしょう? そこは成長している」と意外な点について触れた。つまり、ケガをして落ち込んで黙り込む、というのではなく、適度に自分を客観視して話ができた点を「成長」ととらえているようだ。
プロの力士とはいえ、病院の休診日にケガの状況を専門的に診てもらえない。トレーナーに来てもらって、患部を診てもらっているようだ。中日を終えて7勝1敗。10勝すれば大関に復帰できる状況にあり、出場の可否・是非を判断するのは、本当に難しい。
巡業部長の高田川親方(元関脇安芸乃島)には、あらためて今後の巡業方針について聞いた。まだ日程が決まっていない来年の夏巡業以降は、力士たちのコンディションを考えながら過密日程にならないようにしていくとのこと。今場所後の夏巡業についても少し聞けた。これまでのように「幕内力士+十両3枚目以上」でなく、「幕内力士+ご当地力士として勧進元が出場を望む力士」を優先的に巡業初日から帯同するという。
生田目さんが旭富士さんの序ノ口デビューからの連勝を「25」で止めた。後日、先代伊勢ケ浜の宮城野親方(元横綱旭富士)に聞くと「生田目には本当に申し訳ない言い方になってしまうが」と前置きしつつ「(旭富士が)調子を下ろしすぎ」とも指摘していた。まだこんなもんじゃないと実力を高く買っている。
午後3時半に織田信長さんと待ち合わせ。名古屋城での仕事を終えた後、暑い中にもかかわらず、徒歩でIGアリーナまで来てくれた。当初は、室内でのインタビューを予定していたが、IGアリーナと幟をバックに絵作りした方がよいだろうと信長さん側から提案いただいた。何を聞いてもぶれない設定はさすが。聞くところによると、史実などは相当勉強しているという。「明智光秀に言いたいことは?」と聞いても、ちゅうちょせつに答えてくれた。
NHK大相撲中継は、陸上女子100メートル障害の元日本記録保持者・寺田明日香さんがゲスト。後日、映像を見直したが、話が抜群にうまく、表現力豊か。トレーナーが一緒だという大栄翔関は、同じグループラインがあるそうで、ゲスト出演の日だったことも知っていた。「ハードルはどうですか?」と聞いたが「怖くてできませんよ」。この日、幕内実況を担当した三輪アナウンサーは陸上競技も担当している。そんな縁も、寺田さんのキャスティングにつながったようだ。
前日負傷した安青錦関は、初めて大の里関に勝った。支度部屋のモニターでその瞬間を見ていた床山の床仁さんも付け人の皆さんも、信じられないという顔をしていた。支度部屋で、安青錦関の左足を見た。テーピングを取った後だから、患部の様子がよく分かる。親指の付け根から、足の甲のあたりまでがとてつもなく腫れていて、内出血もしていた。いったい、この足は何日目までもつのだろうか。
新会場の座布団なのに、なぜ?
10日目
午前9時33分、エレベーターで4階から1階に下りる途中、「に~し~、たか~や~す~」と呼び出しさんの声がうっすら聞こえてきた。これは誰かが発声練習しているのだろうとピンと来た。
本文残り81% (6993文字/8624文字)

1996年入社。特別編集委員室所属。これまでオリンピック、サッカー、大相撲などの取材を担当してきました。X(旧ツイッター)のアカウント@ichiro_SUMOで大相撲情報を発信中。著書に「稽古場物語」「関取になれなかった男たち」(いずれもベースボール・マガジン社)があります。
-
大相撲【琴栄峰インタビュー】一門を超えて伝授された四股、飛躍のきっかけと近づいた優勝
【琴栄峰インタビュー】一門を超えて伝授された四股、飛躍のきっかけと近づいた優勝 22歳の新鋭、琴栄峰(佐渡ケ嶽)が夏場所…
佐々木一郎
-
大相撲安青錦が休場中に考えていたこと 「落ちたらまたもう1回、上がればいいだけ」
安青錦が休場中に考えていたこと 「落ちたらまたもう1回、上がればいいだけ」 安青錦(22=安治川)が、名古屋場所(7月1…
佐々木一郎
-
大相撲若隆景と若元春が弟として感じたこと… 大波3兄弟の長男・若隆元が若者頭へ転身
若隆景と若元春が弟として感じたこと… 大波3兄弟の長男・若隆元が若者頭へ転身 大波3兄弟の長男、若隆元(34=荒汐)が夏…
佐々木一郎
-
大相撲力士の化粧まわしや締め込みが燃えてなくなった 31年前のパリの記憶
力士の化粧まわしや締め込みが燃えてなくなった 31年前のパリの記憶 大相撲パリ公演が2026年6月13、14日にフランス…
佐々木一郎
-
大相撲【夏場所こぼれ話 9日目~千秋楽】国技館カレーはおかわりしていいのか?
【夏場所こぼれ話 9日目~千秋楽】国技館カレーはおかわりしていいのか? 2026年の大相撲夏場所は、小結若隆景の25場所…
佐々木一郎
-
大相撲【夏場所こぼれ話 初日~8日目】勝敗が変わらなければ確認の物言いは付けなくていい
【夏場所こぼれ話 初日~8日目】勝敗が変わらなければ確認の物言いは付けなくていい 2026年の大相撲夏場所は、小結若隆景…
佐々木一郎
-
大相撲【宇良の世界(後編)】時間の有効活用を目指すミニマリスト「モノの2軍はいらない」
【宇良の世界(後編)】時間の有効活用を目指すミニマリスト「モノの2軍はいらない」 宇良(33=木瀬)は、モノや時間を大切…
佐々木一郎
-
大相撲【宇良の世界(前編)】語らない理由と理想の相撲「気持ちは棒銀、型は四間飛車で」
【宇良の世界(前編)】語らない理由と理想の相撲「気持ちは棒銀、型は四間飛車で」 宇良(33=木瀬)は、多彩な技で観客を沸…
佐々木一郎
-
大相撲【母の日】御嶽海が天国のマルガリータさんに伝えたいこと「ケガをしないように…」
【母の日】御嶽海が天国のマルガリータさんに伝えたいこと「ケガをしないように…」 5月の第2日曜日。夏場所初日は例年、「母…
佐々木一郎
-
大相撲大の里は高安の助言をどう受け止めたか 尊重し合う2人の関係性
大の里は高安の助言をどう受け止めたか 尊重し合う2人の関係性 横綱大の里(25=二所ノ関)は、痛めている左肩について兄弟…
佐々木一郎
-
大相撲高安はなぜ大の里に助言を送ったのか? 恩返しと大局観「相撲界が良くなればいい」
高安はなぜ大の里に助言を送ったのか? 恩返しと大局観「相撲界が良くなればいい」 春巡業中、高安(36=田子ノ浦)の優しさ…
佐々木一郎
-
大相撲プレスリリースに書かれていなかった事実 午前3時に何があった? 処分は妥当か?
プレスリリースに書かれていなかった事実 午前3時に何があった? 処分は妥当か? 日本相撲協会は4月9日、伯乃富士の暴力を…
佐々木一郎
-
大相撲【アンケート結果発表】日本相撲協会の伊勢ケ濱親方への処分をどう思いますか?
【アンケート結果発表】日本相撲協会の伊勢ケ濱親方への処分をどう思いますか? 伊勢ケ濱親方(元横綱照ノ富士)が伯乃富士に暴…
佐々木一郎
-
大相撲ヤメ力士超相撲って何?優勝は元大関把瑠都か引退したばかりの英乃海か…賞金100万…
ヤメ力士超相撲って何?優勝は元大関把瑠都か引退したばかりの英乃海か…賞金100万円 元幕内力士10人によるトーナメント大…
佐々木一郎
-
大相撲【春場所こぼれ話 8日目~千秋楽】実況も惑わせた宇良 北陣親方は何を読んでいる?
【春場所こぼれ話 8日目~千秋楽】実況も惑わせた宇良 北陣親方は何を読んでいる? 大相撲春場所は、関脇霧島の優勝で幕を閉…
佐々木一郎
-
大相撲【春場所こぼれ話 初日~7日目】なぜ横綱が負けても座布団が飛ばないのか?
【春場所こぼれ話 初日~7日目】なぜ横綱が負けても座布団が飛ばないのか? 大相撲春場所は、関脇霧島の優勝で幕を閉じました…
佐々木一郎
-
大相撲【霧島 優勝一夜明け会見全文】「先代のようなかっこいい大関になりたい」
【霧島 優勝一夜明け会見全文】「先代のようなかっこいい大関になりたい」 春場所で14場所ぶり3度目の優勝を果たした関脇霧…
佐々木一郎
-
大相撲元大関貴景勝の湊川親方が解説に込める思いとは? 5つのポイントを解説
元大関貴景勝の湊川親方が解説に込める思いとは? 5つのポイントを解説 元大関貴景勝の湊川親方(29)が春場所5日目の3月…
佐々木一郎