G1寛仁親王牌、G2サマーナイトFを制するなどトップレーサーとして活躍した市田佳寿浩氏は、18年12月の引退後に地元福井で「市田道場」を開き、後進の指導に力を注いでいる。

市田佳寿浩氏(2020年8月21日撮影)
市田佳寿浩氏(2020年8月21日撮影)

門下生は現在13人でプロが中心だが、競輪選手を目指すアマチュアも指導する。市田氏は「力を伸ばしてあげるだけでなく、生活態度も注視している。道場の掃除にしても、周りの人に感謝しながら行うことが大切。その中で信頼感も生まれると思う」と話す。

これまでガールズの柳原真緒、脇本勇希や117期の枠元一葵ら多くの生徒を選手養成所に送り込んだ。滝沢正光養成所所長からは「市田のところの生徒はしっかりしている」と最大級の褒め言葉をもらった。特に枠元は早期卒業者を除く在所成績70位で最下位だったが、真面目な練習が実ってチャレンジでは決勝の常連となり、10月大垣で初優勝もした。これは市田氏にとって大きな喜びだった。

道場の門をたたくのは力をつけたい人ばかりではない。生きてきた過程を評価されていないと思い「競輪選手とは…」と悩む人も多い。名声や賞金に惑わされて周りが見えなくなっている人もいる。「そんな時は方向性を見いだすために、どうすればいいかを考えます」と人生観や生きている時間を共に見つめる。県外からもいろいろなことを学びにくる選手が増えた。市田氏はこれからもさまざまな人と接しながら、覚悟を持って競輪を支えていく。