普段、記者がどのように取材をしているかを読者の皆さんに感じてもらえればと、今回の「企画」を思い立った。

児島ボートでは2月20日~25日まで「ルーキーシリーズ 第3戦」が開催された。地元の岡山支部から森智哉(26)という選手が参戦。明るい性格な上、ざっくばらんに話ができるいい男である。

森智哉(24年2月19日撮影)
森智哉(24年2月19日撮影)

そんな彼を、当方が紙面で担当するコラム「一喜一憂」内で追跡取材を試みた。理由としては地元戦が23年11月の一般戦以来で久々に顔を見るのと、当地ルーキーシリーズは初参戦でもあったから。この「企画」は、その紙面コラムの「まとめ」でもある。

節間、彼の相棒となったのは複勝率46・6%の21号機。感触は「直線でやられる感じがした。ターン出口も重い」とし「初日はペラとチルトで」と調整の方針を話した。この時の足自体はいまいちだったが、応援の意味も込めて初日のコラムでは彼を狙った。結果は4着2本。「期待に応えられず、すみません」と悔しがっていた。

2日目、森と少し談笑。エンジンのことなどを話した。そこで初日のコラムで推していたことを話すと「記者さん、児島選手に対しての情が厚すぎ」。選手を見ていると時々だが、足や技量だけでなく“気合”で走ることがある。足は発展途上でも、彼の底力を信じて推したのだが、それを「情が厚い」と感じてくれた様子。ますます森を毎日書きたいと思うようになり“1日森1回”を決めた。

3日目から準優勝負駆けになるため、森も得点は気になるところ。「頑張ります。(勝負駆けを)成功させます」と気合を入れていた。この時はさすが選手らしい顔を見せた。

4日目、その準優勝負駆けを成功させる。児島での準優は初進出となった。レース後「レースミスがあったので明日(5日目)はいいレースを見せられるように頑張る」とプロらしいコメントをくれた。少しはリラックスして欲しいという思いもあり、次に質問したのが、ラーメン好きな彼が最近うどんにはまっていることについて聞いた。「丸亀でうどんを初めて意識して食べた時にうまいと思い、岡山でも似たようなものを探すようになった」。しっかりした理由があっての「うどん」に新鮮さを感じた。

取材としてはラストとなる5日目。準優12R5枠の結果は4着で、デビュー初優出を果たせなかった。1周1Mでまくり差して、一瞬2番手争いも見えていただけに当方も悔しい気分になった。レース後、取材をしようと森を待っていると、他選手が現れたのでいったん、その選手を取材。終わった後に向かうと「何やってんねん(笑い)待ってたのに」。あらら。笑いながら冗談を言われ「ごめん、ごめん。惜しかったなぁ」。当方なりに、彼の頑張りを称賛した。予選から準優までを終えた感想を聞くと「疲れた…。大変だった」。本当に森は頑張っていた。

彼への思いが強いのには1つ理由がある。児島担当になりたての当時、森は21年5月に128期として当地でデビュー。児島初心者の当方としては、ある意味同じスタートを切った気分だった。

今回、新たな試みであえて1人の選手を追跡取材してみたが、こういったまとめ記事にしてみると、節間のストーリーが見えてくる。まだB1級だが、こうして意識して見ると、テクニックに少しずつ磨きがかかっているのが良く分かった。また、誰かを勝手に追跡取材し、勝手にノンフィクション作品を作ってみたい。【前原一樹】