【ヤマコウの時は来た!】

 ◆11R:KEIRINグランプリ 競輪界最高峰のレース、KEIRINグランプリの勝者を決める時がやってきた。武田豊樹が関東ラインの先頭を志願し、番手回りとなった平原康多が有利という見方が多い。

 しかし、本当にそうなるのだろうか。03年の京王閣YGPに出場し、GPを目標にやってきた稲垣裕之も、先行意欲という点では武田の関東ラインと互角だ。しかも、番手は敬愛してやまない村上義弘なのだ。彼がいなければ、今の稲垣はいないと断言できる。その村上は、GP出場を巡る賞金争いの最終戦となった小倉競輪祭決勝で敢然と先行した。後ろを回った弟博幸が「あらためて兄やんの偉大さが分かった」というほど、負けても見せ場をつくる選手だ。そんな選手に前を任された稲垣がすんなり関東ラインに先行させるとは思えない。

 となると、暴走するのではなく、純粋に力の勝負に徹するのではないか。昨年の岸和田GPで、近畿ラインの先頭を回った村上が、先行選手の戦い方で混戦をつくりだした。稲垣もそんなレースをするイメージで、今回のGPを推理した。

 そこで、有利となるのが新田祐大、浅井康太だ。今年の京王閣日本選手権(ダービー)決勝は、新田が武田-平原の後方からまくり上げ、平原、浅井と数センチ差のデッドヒートを制して勝利を手にした。展開有利だったのは平原、コースが空いて突っ込んできたのが浅井だった。

 その後の新田の快進撃はいうまでもないだろう。3月のダービーを制したことによって、GPに照準を合わせたトレーニングができた。それも大きい。

 私の現役時代、新田は戦いやすい相手だった。力はあるが、戦法が淡泊で対策を練ることができた。しかし、今の新田は圧倒的脚力という武器がある。前団で走る選手たちが新田の影におびえ、意識する存在になった。今回は、関東と近畿の主導権争いが想定される。両ラインが脚力を消耗したところを新田が仕掛ける。この戦いを制すれば今年の獲得賞金は2億6000万円を超え競輪界の新記録となる。新田が悲願のGP制覇と新賞金王の栄誉を手にする。(日刊スポーツ評論家・山口幸二)