【栗田文人・車券放浪記】

◆11R:決勝

G1最高峰の頂に立つ時がきた。平原がダービー初制覇を成し遂げる。

単騎を入れて超細切れ戦になったが、関東ラインだけは3車と長い。しかも、その役割がはっきりしていることが強みだ。前を回る真杉は正規配分としてはG1初出場で、戦法に一点の曇りもない。準決11Rも平原を連れて打鐘前からけれん味なく先行。「昼ご飯も喉を通らなかった」というほど緊張したというが、同時に「レースになったら普通に行けました」と強心臓を併せ持つことも証明した。

3番手武藤も「アマチュア時代から憧れていた平原さんにしっかり付いていくだけです」と何の迷いもない。そして平原も「相手も強いけど、ラインの力を合わせて頑張りたい」と、その目は仲間への揺るぎない信頼と、自身への確固たる自信にあふれていた。

満身創痍(そうい)だ。初日特選では打鐘から先行して3着に粘るも、ゴール後に落車。「外傷はほぼ治ってきているんですが、内臓の方にダメージがあって…」と言いながら、4日目ゴールデンレーサー賞でも再度先行。自らにむち打つことで超回復させてきた。ここまで来れば、あとは気力で乗り切れる。第75回日本選手権は、平原康多に始まり、平原康多に終わる。

「やることは1つ」と言う真杉が打鐘前には主導権を取り、その気持ちに応えて平原が番手から出て押し切る。武藤は表彰台までとみて、逆転があれば絶好調の郡司だ。3連単は(1)=(2)-(3)(7)(4)(5)(9)(6)。