【松井律・競輪黙示録スペシャル】

◆10R:準決 新田祐大は、根っからのスター要素を持ち合わせている。いつだって目立つ場面で、周囲の度肝を抜く走りを見せる。

2予A・10Rは、スルスルと清水裕友の内をすくって前に出ると、そのまま残り2周から先行態勢に入った。かなりリスキーな選択だったが、和田圭の差し込みも、清水のまくりも許さなかった。「まずは自分のやってみたいことができた。コンディション、展開、今日がそのチャンスかなと思っていた」。対戦相手の驚きとは対照的に、新田にとって先行策は必然だった。

今年は東京五輪で個人メダルを獲得して、KEIRINグランプリ(GP)に凱旋(がいせん)出場…。これが競輪に携わる多くの人が想像し、期待した最良のシナリオだった。五輪は延期になってしまったが、新田は腐ることなく多方面のメディアに出演し、SNSを駆使して競輪と自転車競技の“布教”にひと役買っている。

「安定して勝ち続けること。競輪を盛り上げていくためにもファンの求める理想の選手像に近づきたい」。2日目の先行は、そんな強い思いの表れだった。

「感覚的なものが全て100%に近い時は、考えずに戦える。まだその領域にはいません。でも、思っていたよりも状態はいいと思います」。

準決10Rの同型は鈴木、吉田、山田。2日目に新田の先行を見せられているだけに、どっしり構えてはいられない。新田は落ち着いて展開を把握し、最後にひとまくりだ。3連単(9)-(1)(3)(5)-全。