【ヤマコウの時は来た!】

 ◆10R:準決 深谷知広が2着で準決に勝ち上がった。今回は平塚日本選手権(ダービー)初戦で落車して、1カ月半ぶりの実戦。久しぶりに会った深谷は、さらに体を絞って、研ぎ澄まされたシャープな顔つきになっていた。

 伊豆を拠点にブノワヘッドコーチの下で、猛練習していたことがうかがわれる。初日特選は打鍾から稲垣裕之に合わされ、苦しみながらもホームで先頭に立った。番手の浅井康太が離れるほどの切れ味だった。大きく離れて稲垣が追いかける。両者の踏みあいを傍観していた脇本雄太がホームまくりで制した。

 今の深谷と脇本は、以前のような長い距離を踏んで勝負する先行選手ではなく一瞬のダッシュ力で勝負する選手に変貌した。世界で戦うには必要なことかもしれないが、直線の長い日本の競輪では末足の甘さが気になる。見ているところが違うので一概には評価できないが、競輪ファンはもっと脇本や深谷を見たいはずだ。出走回数が極端に少ないので、競輪ファンの好きな物語が無くなっている。これが今のG戦線が盛り上がらないひとつでもある。

 一獲千金を夢見て競輪界に身を投じた選手が多いだろうが、今の深谷は「東京五輪出場に迷いはない」と言う。今後も彼や脇本、新田祐大や渡辺一成らを見る機会は少ないと思う。だからこそ限られた場所で、2段駆けかもしれない徳島勢や、ダービー王の三谷竜生を粉砕して「また見たい」と思わせる走りをすることだ。(日刊スポーツ評論家・山口幸二)

※ヤマコウの予想印 ◎深谷知広・○原田研太朗・▲三谷竜生・☆川村晃司・△志智俊夫