【ヤマコウの時は来た!】

 決勝の9人が出そろった。どの選手も好調で、誰が優勝してもおかしくないメンバーだ。印象に残ったのは稲垣裕之。準決が終わってもあまり笑顔が見られなかった。人の後ろを回るということの責任の重さを認識してのことだろう。悲願のG1初Vなるかどうか。

 そこに立ちはだかるのが、東日本ただ1人となった平原康多。富山共同通信社杯の決勝で落車して直前の向日町G3を欠場。体調面が心配だったが、よく決勝に乗ってきたと思う。

 8月の松戸オールスター決勝は、村上義弘-稲垣の先行が濃厚と思われていた。しかし武田豊樹に前を任された平原も先行を考えていた。それも近畿勢とのたたき合いも辞さずの組み立てだった。タイミングが合わず、結局は村上に先行されたが、武田がそういう作戦だったと後述している。

 平原の口からよく聞くのが「自分が何かしないとレースが面白くならないでしょ」という言葉だ。常にレースを見られることを、意識していないと出ないコメントだ。

 教科書通りに競輪を考えると、脇本ラインと中部勢の先行争い。大阪勢や平原は混戦をまくりたい。園田匠は4角から突っ込み勝負。果たしてその通りになるだろうか。位置取りにうるさい古性優作がいる上、番手の選手はタテにも踏める。簡単にまくれるとは思えない。私は平原が先行の番手を狙うことも十分にあると思う。それでまくられるなら仕方ない。こう思っているのではないか。 約2年ぶりのG1優勝を狙って平原が疾走する。

(日刊スポーツ評論家・山口幸二)