名古屋のオールスター競輪なのに、地元からは誰も決勝に乗っていない。

最後のとりでだった準決11Rの深谷知広-柴崎淳が打鐘で仕掛けられずに負けた。淳は「打鐘前の2角でドーンと外から内に風が吹いた。それで仕掛けるのをちゅうちょしてしまったのでは」と分析したが、寂しい限りだ。

今回の決勝メンバーで、一気にタイトルが見えてきたのが渡辺一成だ。菅田壱道が発進して、新田祐大の番手まくりが濃厚になったからだ。共同記者会見の壱道は、覚悟を決して話していたように見える。

決勝でヤマコウがイチ押しする渡辺一成
決勝でヤマコウがイチ押しする渡辺一成

ラインができるのは平原康多に郡司浩平。この両者が先行で戦う可能性は低い。ただ、平原には展開をつかむ脚力がある上に、準決の敵失を見事にものにした。まず菅田が打鐘前に平原をたたくのをやめた。そして、深谷の打鐘2角前のカマシがなかったため、清水裕友が先行の覚悟を決めた。そこからの2角まくり。小倉竜二のブロックを乗り越える一瞬のスピードは、調子の良さを感じさせた。

決勝は菅田が主導権を取る気持ちが強いため、平原はその後ろが欲しいだろう。番手の新田は是が非でも今年タイトルを取って、来年の東京オリンピック(五輪)に挑みたいはずだ。菅田が先行して平原に行かれてしまったら、面目が立たない。新田は必ず出ていく。そして展開が向くのが一成だ。

近況、ヨコの動きも重視してレースを組み立てるため、成績も安定してきた。東京五輪出場が絶望的な今、競輪で輝く時がきた。(日刊スポーツ評論家)