始まりの春がやって来た。日刊スポーツは連載「春START UP」で、新たなスタートを切る各界の個人、団体を紹介する。

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函館市の遺愛女高を3月に卒業し、ガールズケイリン選手を目指す畠山ひすい(18)が、夢へのペダルを力強く踏み込む。16年に函館市などが立ち上げた「ホワイトガールズプロジェクト」(WGP)を活用し、今年1月に日本競輪選手養成所(静岡)に合格。「自転車の経験は浅いので、これからが本当の勝負です」と気を引き締める。

遺愛女高ではバスケットボール部に所属。コロナ禍で総体中止など挫折を味わったが、目標を自転車1本に切り替え突き進んだ。昨春から5期生としてWGPに参加。1日計6時間に及ぶ練習をこなし「スタート練習で転んだり大変でしたが、もうバンクへの恐怖心もなくなりました」と前に進んでいる。

埼玉県出身。山村留学制度を使い、中学から鹿追町に移り住んだ。大自然の中で乗馬にいそしみ、冬はスピードスケート、夏のサッカーでは協会の育成システム「トレセンメンバー」入りするほどだった。それでも幼少期に見た大宮競輪でのレーサーの雄姿が脳裏から離れることはなかった。「あの時からずっと競輪選手になる、という夢を抱き続けていました」。

高校の進学先に函館を選んだのも競輪場のある街だったからだ。函館競輪選手会事務局の穴田裕哉さん(53)は「畠山さんは競技未経験者の『適性試験』という枠での合格。これからは世界選手権などに出場した人たちと一緒になる。簡単な道ではない。それでもさまざまなスポーツを経験しているだけあって体幹が強く、キック力もある。経験が浅い分だけ伸びしろも大きい」と期待する。

第122期生として5月末に控える入所時期まで、函館競輪場で練習を積んでいる。「技術を磨き、早くプロになって両親やお世話になった関係者の皆さんに恩返しをしていきたい」と、曇りひとつない澄んだ目を輝かせた。【奥村晶治】

◆畠山(はたけやま)ひすい 2002年(平14)5月27日、埼玉県生まれ。中学1年時に山村留学を利用し母、妹とともに北海道鹿追町に移住。サッカーは小学4年から始め、高校ではクラブチームに所属。ポジションはボランチ。土・日曜はサッカー、平日はバスケットボール部で活動。家族は両親と妹。164センチ、59キロ。

◆ホワイトガールズプロジェクト ガールズケイリン選手の発掘、育成を目的に、函館市、日本トーター、日本競輪選手会北海道支部が16年4月から実施している共同プロジェクト。これまで1期生3人、2期生1人、3期生1人、4期生2人、5期生2人。畠山を含め6人が日本競輪選手養成所(18年までは日本競輪学校)候補生試験に合格し、3人がプロデビューを果たしている。