父の前で、ダービー王の称号を勝ち取った!! 単騎戦だった山口拳矢(27=岐阜)がゴール寸前で清水裕友をかわし、G1初決勝で初優勝を決めた。父ヤマコウ(山口幸二氏=日刊スポーツ評論家)も98年のG1オールスターを制しており、3組目の特別競輪(現G1)親子制覇。年末の立川グランプリ(GP、12月30日)切符も手にし、史上初の親子SS戦士の誕生となる。年間獲得賞金は早くも1億円を突破。ヤマコウは感激の思いを特別寄稿した。2着は清水、3着が佐藤慎太郎で、脇本雄太は7着だった。
【ヤマコウ特別寄稿】拳矢がまさか優勝するとは…「王」として常に恥じないレースを
初めてG1決勝に進んだ山口拳矢が、単騎待ちの役満を一発でツモった。
「衝撃のラストを見逃すな」のキャッチコピーは本当だった。中四国ラインの組み立ては完璧のひと言。“最強最速”を掲げる脇本雄太も、絶好調の新山響平も、最終バックまで動けない。番手発進した清水裕友の勝利を誰もが確信したその時、青いユニホームが軽やかに大外を突き抜けた。
「共同(通信社杯)を勝った時みたいに、朝から勝てそうな予感はあった。(佐藤)慎太郎さんのブロックでスリップしたけど、この距離ならいけると必死で踏み切りました」
表彰式で父ヤマコウは、愛息をこんな言葉で出迎えた。「拳矢、覚えとるか? (スタンドを指さしながら)おまえ、オレのグランプリ、あそこで見とったんやぞ」。父が12年前にKEIRINグランプリ優勝を祝ったステージで、拳矢はシャンパンシャワーを横殴りの雨に浴びせた。
「父の顔を見たら、もうちょっと泣きそうになるかと思ったけど、意外に大丈夫でした。G1を勝った衝撃が大き過ぎて、まだ実感が湧いていないです」
親子でのG1タイトルホルダーは、史上3組目。親子SS班は、史上初となる。「これでグランプリが確定したので、そこを勝てたら最高。スタイルを崩さないように、これからも頑張ります」。父譲りの才能と強運を“持ってる”息子は、想像をはるかに超えるスピードで父の功績に迫っていく。【松井律】
◆親子G1制覇 山口拳矢は父幸二が98年オールスターを制しており親子での特別競輪(現G1)制覇となった。過去に父松村憲(53年高松宮杯)と信定(82年オールスター)、父稲村雅士(71年高松宮杯など)と成浩(01年ダービー)の例があり、22年ぶり3組目の親子制覇となった。
◆山口拳矢(やまぐち・けんや)1996年(平8)1月26日、岐阜県大垣市生まれ。日大中退。競輪選手養成所117期生として20年5月に小倉ルーキーシリーズでデビュー(1.1.1)。7月の本格デビュー後にマークした20連勝は当時最多タイ。21年9月G2共同通信社杯(岐阜)で初のビッグタイトル。通算231戦117勝。通算獲得賞金は2億1604万3100円。166センチ、70キロ。血液型A。