W杯米国大会 ブラジル対カメルーン ブラジルMFマウロ・シウバ(中央)にプレッシャーをかけるカメルーンFWロジェ・ミラ。右はブラジルMFドゥンガ(1994年6月24日撮影)
W杯米国大会 ブラジル対カメルーン ブラジルMFマウロ・シウバ(中央)にプレッシャーをかけるカメルーンFWロジェ・ミラ。右はブラジルMFドゥンガ(1994年6月24日撮影)

カナリア軍団へのノスタルジーは強い。それは初めて熱中して見た82年W杯スペイン大会の記憶が色濃いからだろう。

「黄金のカルテット」。ジーコ、ソクラテス、ファルカン、セレーゾがダイヤモンド型に並ぶ中盤は美しかった。当時のテレ・サンターナ監督も「ドリームチーム」と称していた。

技術はもちろん、高いインテリジェンス(知性)と創造性を持った4選手がシンクロしていく。ジーコの動きに合わせ、右斜め前方へ駆け抜けるソクラテス。そこへ地をはうスルーパスが寸分の狂いもなく、足もとへと届く。

そんな動きが次々と重なり、まるでカナリアが美しいハーモニーを奏でるかのようだった。

「攻撃的な美しいサッカー」

ブラジルは国民の期待に応えるべく、呪文のように唱えられてきた。

ブラジルでは創造性あふれる魔法使いたちを「クラッキ」と呼んだ。1970年のメキシコ大会。ペレ、トスタン、ジャイルジーニョ、リベリーノらの「クラッキ」をそろえ、3度目の優勝を果たした。その古き良き時代が忘れられないからだろう。

ただ戦術が変化する中、「美しい」ばかりでは勝てなくなった。

24年後の94年大会、パレイラ監督に率いられたブラジルは、違うスタイルで4度目の優勝を手にした。

注目されたのは「ボランチ」。ドゥンガとマウロ・シウバというリアリスト2人がチームのかじ取り役を担い、ゴール前に入っていくロマーリオ、ベベットの強力2トップに両サイドからパスが渡った。

美しくはなかった。役割が明確な分、創造性に乏しかった。しかし着実に勝ち上がっていった。

決勝は炎天下の過酷な状況も影響し、延長戦まで0-0。PK戦の末に栄冠を手にした。その中心にいたのは間違いなく主将のドゥンガだった。

その20世紀の晩年、ブラジルの名将ザガロ監督が残した言葉は印象的だった。

「これからの時代はよりスピードが重視される。昔は身体能力に秀でていなくても技術と知性があればプレーできた。走り回るのは選手でなくボールで良かった。しかしこれからはフィジカルが根本にあり、スピードのない選手はチームにとってマイナスになる」

21世紀へ入り、戦術は大きく変わった。カウンターは主流となり、最前線からのプレスがよりクローズアップされている。人とスペースに加え、時間も攻略していくという戦い方だ。

今大会のブラジルの1次リーグ3試合を見て、つくづくそう思う。

この日のスコットランド戦の先制点、VARで取り消された追加点も“前からはめた”ものだった。

「カテナチオの国」イタリア人のアンチェロッティ監督により、いい守備から効率良く攻撃するという形が明確だ。ノスタルジーを込めて言うなら、美しくない。でも結果は出る。

歴史は繰り返されると言う。くしくも優勝から遠ざかって24年。94年大会の再現となるのか、興味は尽きない。【佐藤隆志】

スコットランド戦の前半7分、FWビニシウスが先制点を決め喜ぶブラジルの選手たち(ロイター)
スコットランド戦の前半7分、FWビニシウスが先制点を決め喜ぶブラジルの選手たち(ロイター)