箱根駅伝4連覇中の青学大の原晋監督(51)は、選手の見極めに心を砕いている。陸上の長距離選手の場合、成長には前触れがある。

 原監督 練習を100%でなく、腹八分目に出来るようになり、初めて成果が出るのが長距離の論理。余裕度を生むためには生活がきちっとしておかない。

 その余裕を見極めるポイントがある。まず食事。

 原監督 食べる風景を見るのが大切。ハードな練習をしても、食べる量が多かったら、余裕度がある。

 また朝一番の動きも重要な点という。体の不調を見極めることにもなる。

 原監督 体操、フィジカルの動きだけでもいいので朝6時にちゃんと起きさせるべきだと思います。前日の練習がきつかったり、故障を抱える選手は朝一番に反動が出やすい。足を引きずっていたり、テンションが下がっている。

 競技は違うが、学べる材料は多い。

 サッカー日本代表は監督が代われば、目指すスタイルも変化する。「日本のサッカー」。何げなく耳にする曖昧な言葉の中身は何か。それが表現しづらいところに、世界での立ち位置が上がらない理由が凝縮される。ビッグクラブへ移籍を実現させる選手は増えても、最新のFIFAランキングで日本は60位。変わらず低いままだ。自身の指導経験に重ね合わせながら、続ける。

 原監督 青山学院の軸、本流があった上で、その年の個の対応を変える。日本サッカーはスタイルが違うA監督とB監督が来て、軸が積み上がっていないという現実がある気がする。日本メソッドを作った10年後、日本が強くなれば、欧州がまねをするかもしれない。スポーツは急には上がらない。私も最初はボロクソに言われ、クビを切られる寸前だった。結果が出る前にある工程表の中で、やるべきことをやってきたから花開いた。日本サッカー界は10年、20年の尺でどの部分が上がっていったか見えてこない。

 目標は「半歩先」に置くべきが持論で、「目標と妄想は違う」と唱える。

 原監督 箱根駅伝も先頭を見える位置に来て、初めて優勝を争える。いきなり優勝と目標を立てたら、それはうそになる。モチベーションの持っていき方で言えば、半歩先に目標設定を置く。最高成績がベスト16を2回なのに、ベスト4は厳しい。まずベスト16に定着し、ベスト8がある。次、確実にベスト8を続けた先にベスト4がある。

 とはいえ世間から結果を求められる。本番前に監督が交代する緊急事態を経て、残った期間は1カ月だ。

 原監督 劇薬をあえて言うなら、「俺たちいける」との妄想に駆られるのではなく「俺たちは弱い」と認めること。その上で(大会後の)将来はこうなると、具体的にやるべき順番をつける。この点が足りないと数値化するしかない。1人の強い監督を持ってきたら強くなるのではない。協会も責任を取る覚悟で、弱いものを強くしないと。

 破天荒な指揮官の中に、強くなるヒントが詰まっている。

【取材・構成=井上真、田口潤、上田悠太】(つづく)