5日、埼玉スタジアム。浦和レッズが川崎フロンターレに1-4で完敗した。ふがいない戦いに、試合後、サポーターが怒る。チームの移動バス前に集まったサポーター。ミハイロ・ペトロビッチ監督(59)は自らの意思で2度もバスから降り、次節(9日、対新潟アルビレックス)から連勝できなければ、チームを去ると、伝えた。

 バスがスタジアムを離れたのは、選手ら全員が乗り込んでから1時間以上が過ぎていた。浦和は新潟戦で逆転勝ちしたため、指揮官の辞任は阻止された。さまざまな意見がある。「まぁ、浦和サポだから。彼らは騒ぎたがるからね」と、サポーターへの批判の声がある。監督が自らサポーターの前で説明したことへの批判もある。「レッズでそんなことになったら、いずれうちのサポーターも『監督出せ』というんじゃないかな。余計なことしてくれたね」という他のクラブ幹部もいる。

 私はサポーターが試合後、チームに対して抗議することは、アリだと思っている。見に来た子供たちの安全が確保され、さらに法に触れない範囲なら、それは彼らの権利でもあると、個人的には思う。

 「サポーターは12番目の選手」。クラブにかかわるほとんどの人が、この言葉を口にする。以前、サポーターが騒ぐと「彼らはサポーターなのに、サポートしてない。選手を早く帰して、休ませたいのに、これじゃ次の試合に影響が出る」と不満を漏らす関係者がいた。クラブ内では、そういうことを聞くことがあっても、サポーターの前では言わない。サポーターが離れると、クラブ経営が難しくなるからだ。

 今回の一件。最も対応がまずかったのは、社長ら経営陣ではないだろうか。サポーターに説明するのは、監督ではなく、クラブ幹部でないといけない。監督自らサポーターの前に出た時点で、フロントの無能ぶりが露呈された、ということだ。監督だって5年以上も同じチームにいれば、クラブ周辺の事情まで把握できる。社長や強化部の幹部が説明しても、サポーターが納得しないことを把握しているからこその行動ではなかったのだろうか。

 監督の言葉は重い。今回、辞任の可能性もあったわけだが、強化部でリスクマネジメントしている形跡は見当たらない。監督を信じてサポートしていく、との言葉を繰り返すだけだ。

 浦和はJ最大の経営規模を誇るクラブだが、強化部門のトップに、プロの責任者を置かない。プロのGMなら、失敗は解雇に直結するが、浦和は強化に失敗しても、担当者が責任を取ることはない。いわばアマチュア集団だ。しかも勤続年数によって、昇進していく。J最大のビッグクラブの名が泣く、悲しい現状だ。今回の一件を、生まれ変わるきっかけにしてはどうだろうか。【盧載鎭】

 ◆盧載鎭(ノ・ゼジン)1968年9月8日、韓国ソウル生まれ。96年入社し、約20年間サッカー担当。関東のほとんどのクラブ担当を経験し、浦和は過去、2年半、担当している。現在は主にJFAハウスに出没中。