川崎フロンターレが昨季のJリーグで悲願の初タイトルを手にした。昨季の川崎Fの全34試合で感じたのは、雨が多かったことだ。昨年7月29日のホーム・ジュビロ磐田戦は豪雨でどしゃぶり、遠くでは雷鳴が響く荒天だった。10月29日のアウェー・柏レイソル戦は台風接近でピッチがぬかるみと化し、悪環境での戦いを強いられた。

 昨季のリーグ戦の天候を公式記録と照らしあわせてみると、試合中に雨が降ったのは11試合。約3分の1である。16年シーズンは雨天は3試合だった。昨季は約4倍も雨にたたられたのだ。

 第29節ベガルタ仙台戦(10月14日)から第32節ガンバ大阪戦(11月18日)までは、4戦連続で雨。極め付きは11月23日の練習試合だった。1本目でどしゃぶりで、ピッチは水たまり状態。2本目に雨が止み、選手が帰路につく頃は快晴へと変わっていた。MF中村憲剛(37)は「この天気は何?」と首をかしげ「(雨男は)だれ?」とポツリ。報道陣が、昨季から指揮を執っている鬼木達監督の名を上げると、中村は「違う! オニさんは去年もいた。今年来た人だと思う」。

 疑惑の目が向けられたのは、分析担当として加入した二階堂悠コーチ(33)だった。J2山形から加入し「山形から雪を持ってきました」と話していたそうだ。二階堂コーチを直撃すると「確かに、プライベートでも雨が多いと感じる」と「雨男」を自覚していた。

 リーグの優勝争いをしている11月。二階堂コーチが「いつか、感動の涙の雨が降りますよ」と予言した。その通り、チームは12月2日、晴天のホーム等々力の地で悲願の初タイトルを手にした。スタンドもピッチ内の選手も涙…。予言通り「涙の雨」となった。12月10日のパレードも快晴。沿道もまた「感動の雨」と化した。雨にたたられたシーズンがウソのような快晴で、中村も「フロンターレ色の空」と表現していた。

 そして今季。二階堂コーチに「今季は雨男、卒業できそうですね」と話すと「いや…。雪を持ってきてしまいましたから」。チームが宮崎キャンプから戻ってきた直後の1月22日。関東地方で大雪となり、翌23日の練習が中止になった。スタッフや選手の有志が練習場の雪かきに励み、24日から練習を再開した。確かに嫌な予感…。

 ちなみに、10日の富士ゼロックス・スーパー杯は曇りのち雨の予報だ。試合中に雨が降ったらやはり、二階堂コーチの「雨男説」はもはや揺るがないだろう。今季も最後は感動の雨になることに期待したい。【岩田千代巳】

 ◆岩田千代巳(いわた・ちよみ)1972年(昭47)、名古屋市生まれ。菊里高、お茶の水女大を経て95年、入社。主に文化社会部で芸能、音楽を担当。11年11月、静岡支局に異動し初のスポーツの現場に。13年1月から(当時)J1磐田を担当。15年5月、スポーツ部に異動し主に川崎F担当。