日本代表の監督を解任されたバヒド・ハリルホジッチ氏(65)が、名誉回復と解任の真相解明を求めて提訴に踏み切るという。日本協会の田嶋幸三会長(60)は「選手とのコミュニケーションや信頼関係が薄れたこと」を主な解任理由に挙げ、ハリルホジッチ氏は「問題はなかった」と反論。来日して会見を開き「田嶋会長に不満を言った代表選手は2人」と明かすと、田嶋会長は「1人か2人の選手が反乱したような言い方は失礼。選手の対応は大人。選手たちこそ日本サッカーのことを真剣に考えていた」とした。

 それはさておき、ハリルホジッチ氏が「デュエル」という概念を「置きみやげ」として残してくれたことは、日本にとって大きな財産だ。「決闘、対決」を意味し、サッカーにおいては、1対1の競り合いでの球際の強さ、ボール奪取力とボール保持能力を指す。中盤の高い位置でボールを奪い、効果的なショートカウンターで敵陣を脅かす。日本代表が世界で生き残るためにも「デュエル」は欠かせない要素の1つだ。

 そして、「デュエル」の持ち主が仙台にいる。MF奥埜博亮(28)だ。今季はリーグ戦7試合に出場し無得点と目立たないが、3月31日の長崎戦で左ひざの靱帯(じんたい)を損傷しチームを離脱するまで、リーグ最多となるタックル数(25回)をマークし、デュエル数(78)もリーグ最多と、1対1での球際の競り合いで断トツの勝率64%をはじき出していた。

 リーグ最強のデュエルを誇る選手となると、大柄で屈強なイメージだが、奥埜は身長は171センチ、68キロ。ボールを保持する外国人選手にまとわりついてマイボールにしたり、表情も変えずにひょうひょうと倒され、ファウルを奪って相手をいらつかせるシーンを何度も見た。奥埜を見ていると、小兵でもデュエルする足元の技術に優れた11人を集めれば、世界と戦えるのではないかと想像力を広げてしまう。

 中途半端な高さがあっても世界には通用しないし、いっそ制空権を放棄したチーム編成はどうだろうか。身長170センチ以下のデュエル集団「U-170」日本代表を新設とか…。不可解な解任劇が起きた日本代表を見ていると、目指すべきチームの将来像を考えてしまう。

 ◆下田雄一(しもだ・ゆういち) 1969年(昭44)3月19日、東京都生まれ。Jリーグが発足した92年に入社し写真部に配属。スポーツではアトランタ、長野、シドニー五輪などを撮影取材。17年4月に2度目の東北総局配属となり、同11月から仙台を担当。

蜂須賀(右)と競り合う仙台MF奥埜(2018年5月1日撮影)
蜂須賀(右)と競り合う仙台MF奥埜(2018年5月1日撮影)