J1北海道コンサドーレ札幌の田子大地広報(40)が福井で開催中の国体に、ボート成年男子舵手つきフォアの北海道代表として出場した。10月1日の予選でB組5位。目標だった準決勝進出は逃した。4日、札幌ドーム屋外のホヴァリングステージで練習する選手のもとを訪れ、大会報告をしていた。選手から結果を聞かれると「ダメでした!」などと悔しそうにしつつも、晴れやかな表情を浮かべていたのが印象的だった。

普段は報道陣の取材対応などをこなすクラブ広報が、全国の戦いに挑んだ。佐野高(栃木)から始めたボートで、国体には過去6度の出場経験がある。11年ぶりに全国舞台に返り咲いたきっかけは、身近な存在だった。16年、チームはJ2優勝を果たし、J1昇格を決めた。そのシーズン、田子さんは6年ほど遠ざかっていた本格的なボートの練習を再開した。「経験上、これくらいの練習量でこれくらいの結果が出るというのがわかる。無理でしょって思っていても、自分もチャレンジしてみないと、と思った」。試合で結果を残す選手の姿に刺激を受けた。

業務後にクラブハウス内で筋トレに励み、帰宅後は自宅で漕力トレーニングマシンで鍛え、早朝に大学生らに混じってボートをこぐなど、積み重ねてブランクを埋めた。再開後に初挑戦した17年の国体北海道予選では代表切符を手にできなかったが、今年は念願がかなった。3~4時間しか睡眠時間を確保できなくても、広報としての仕事と練習を両立させた。

田子さんの前職はスポーツ新聞社の記者だった。北海道コンサドーレ札幌や北海道日本ハムファイターズの担当記者を経験している。「サッカー選手って本当にストイックで素晴らしいなと思っていたけど、その大変さや努力は、日本ではプロ野球に比べてなかなか報道されない。サッカー選手の素晴らしさを伝えたいなと思った」と、取材されるサッカー選手のサポート役に転身して現在に至る。私にとっては取材でお世話になる際、同じ立場を経験されている田子さんの存在が心強い。

田子さんに“進退”について聞いた。すると「1年間、もっと積み重ねて来年は準決勝を目指します」と、“現役続行”を宣言。選手のプレーが人々に勇気を与える-。そんな光景を目の前で見せてもらった気がした。


◆保坂果那(ほさか・かな)1986年(昭61)10月31日、北海道札幌市生まれ。13年から高校野球などアマチュアスポーツを担当し、16年11月からプロ野球日本ハム担当。17年12月からコンサドーレ札幌担当。