なでしこジャパン(FIFAランク6位)が中国(同17位)に1-0で競り勝ち、2大会ぶり2度目の金メダルを獲得した。劣勢が続いていた後半45分、途中出場のFW菅沢優衣香(27=浦和)が値千金の決勝点。故障者や海外組の不在で登録は18人ながら、磨きをかけた判断力で頂点に立った。19年ワールドカップ(W杯)フランス大会へ、U-20(20歳以下)W杯で優勝した「ヤングなでしこ」とも融合し、チーム力をより強固なものにしていく。

ぬれたピッチにいる菅沢を目がけ、控え選手が一目散に駆けだした。後半45分、MF中島の右からのクロスを、途中出場の切り札が頭で打ち込んだ。DF三宅、GK山下らの好プレーで続けた無失点は最後に実り、高倉監督は「踏ん張ってこういう形で終われたのは財産。勝ちながら課題を見つけて進めるのは幸せなこと」。ヒロインはもみくちゃにされ、全員で笑った。

直近2試合同様、主導権を握られた。前半はシュート2本。それでもパスをつなぎ、攻撃を組み立てようと試みた。DF鮫島は「これまでなら『(前線に)蹴ろう』。それでもみんなで『やってみよう』となった。いちかばちかですが」。ピッチ上であえて厳しい選択をして、もがきながら結果を出した。

就任約2年4カ月の高倉監督は「中華、和風…。いろいろな食材が交じっていて、味の調整が難しい。でも全く別物じゃないんです、日本だから」となでしこを例えたことがある。世代別代表に比べ、体の強さを感じる一方で「考える力があまりない」と見えた。その上で本職がサイドバックの鮫島とDF有吉を、それぞれセンターバックとボランチで起用。今大会は3人1部屋のソファで、少人数の話し合いを繰り返した。鮫島は「考える力がだいぶ身についた」とチームの変化を実感する。

高倉監督は「昔から最後まで諦めずに戦うというところは、その血を受け継いでいる」と表彰台に立った教え子を評した。個性豊かな“食材”に共通するのは泥臭さ。そこに「ヤングなでしこ」のスパイスも加わる。「目指すところまで、力はまだ足りない」。1年後へ、悩み、踏ん張り、強い土壌を作る。【松本航】