なでしこジャパンが、1次リーグ3連勝で決勝トーナメント(T)1位進出を決めた。国際サッカー連盟(FIFA)ランク48位のエクアドルと対戦した同4位の日本は、前半5分にFW大儀見優季(27=ウォルフスブルク)の今大会初ゴールで先制。追加点こそ奪えなかったが、危なげなく勝利した。佐々木則夫監督(57)は、3試合で登録選手23人全員を起用。さまざまなパターンを試し、連覇へ1歩近づいた。決勝T1回戦は23日(日本時間24日)に行われる。

 大儀見が2戦不発の鬱憤(うっぷん)を晴らすように、ゴール後に右手を突き上げた。開始5分、MF宮間の左クロスがFW菅沢の体に当たってこぼれた。エースは見逃さず、相手DFと競り合いながら左足を伸ばすと、ボールはゴールネットを揺らした。

 「ゴールを決めることより、どう決めるかにこだわる」と大儀見。カメルーン戦では4本だったシュートが、この日は5倍の20本。圧倒的に攻めながら追加点が奪えなかったことに選手たちは不満そうだったが、佐々木監督は「選手にはネガティブではないと言いたい」と前向きに話した。

 攻撃に変化があった。役割が明確でなかった2トップは、菅沢を最前線に固定して大儀見を衛星のように動かした。右サイドをFW大野とDF有吉の細かいパスで崩し、左サイドは宮間を追い越してDF鮫島がチャンスを作った。守備的MF澤が運動量豊富にゴールに迫ることで、攻撃に厚みが増した。試行錯誤しながら決勝Tに照準を合わせてきた成果が、出てきた。

 何よりも3試合で勝ち点9を取り切ったことは大きい。16チームが1次リーグを終えて、3連勝は日本だけ。FIFAランク1位の米国も、同2位のドイツも勝ち点を落としている。前回優勝時も1次リーグでイングランドに敗れた日本だけに、安定感は成長の跡。「勝ち点3を積み上げて1位通過できたのは、よかった」と監督は話した。

 さらに、佐々木監督は3試合を振り返り「23人全員がピッチに立てたことが収穫」と胸を張った。選手の組み合わせを替えながらスイス戦では3、カメルーン戦では5、この日も5パターンを試した。決勝Tに向けて、準備は着々。鮫島は「誰が出てもやれるのが強み。ゴールは1つだけど、あとはラストパスの質。次まで1週間で高める自信はある」と言い切った。

 2試合で16失点したエクアドルから1ゴールしか奪えず、物足りなさは残る。大野は「単調だった」と反省、大儀見は「まだ納得できない部分はある」と悔しがった。それでも、課題を克服しながら粘り強く勝ち上がるのが「なでしこパターン」。3試合連続1点差勝利が、力になる。

 笑顔の佐々木監督は「彼女(澤)が点をとると日本の嵐が吹き荒れる。他国は警戒していただけるよう、お願いします」と上機嫌で「澤弾警報」まで発令した。全員出場で気持ちも戦術も1つになった「なでしこジャパン」。ここからが、本当の戦いになる。【鎌田直秀】