ハリルジャパンがチーム強化の第2段階として「ハリルプレス」に本格着手した。千葉県内で行われている日本代表候補合宿2日目の8日、バヒド・ハリルホジッチ監督(63)は長さ5メートルのロープを使い、等間隔を保ったまま組織的にプレスをかける練習を選手に課した。バルセロナ(スペイン)をお手本としたゾーンプレス守備の導入で、ボール奪取から一気呵成(かせい)の速攻につなげる。

 好天に恵まれた千葉県内の練習場。ハリルホジッチ監督はピッチ中央に、3本の白いロープを準備させた。選手を4人1組に分けると、守備側4人に5メートルのロープの両端を持たせる。「たるまないように間隔をキープしろ」。そしてそのまま、横パスをつなぐ攻撃側の選手に、プレスをかけるよう指示した。

 今回の合宿冒頭、選手に明かしたキーワード「ゾーンプレス」の練習のスタートだった。その後、局面は11対11に発展。組織として、どのタイミングでボール奪取に動くのか。その際、どちらのサイドに相手を追い詰めるのか。ハリルホジッチ監督は事細かに、ボール強奪のメソッドをたたき込んだ。霜田技術委員長は「世界のトップチームがやっていること。積極的にボールを奪いにいく。そして自陣からできるだけ遠い位置で守備をスタートさせて、リスクも減らす」と説明した。

 指揮官はボールを奪った直後のプレーについて「第1はFWにダイレクトで出す。そうでなければ後方でフリーの選手にダイレクトで預ける」と何度も念を押した。できるだけ早く相手からボールを奪い返し、すぐに速攻に移る。攻守の根幹が明確に示された。

 昨年まではW杯アジア2次予選など格下との対戦が中心。しかし今後は最終予選も始まり、その先にはW杯本大会も。指揮官にとって、ここからが手腕発揮のしどころになる。

 前夜にはゾーンプレスのお手本として、選手たちにバルセロナの守備の映像を見せた。就任から1年間、繰り返してきた「ボールを奪ったら縦に速く」「球際を激しく強く」といった指示も、このゾーンプレス守備の下地となるものだった。準備は万全。満を持してハリルホジッチ監督が「引き出し」の中身を披露した。【塩畑大輔】

 ◆ゾーンプレス 相手に複数選手で組織的に圧力をかけ、ボール奪取を狙う戦術。80年代にACミランを率いたサッキ監督によって体系化された。日本では90年代に加茂監督率いる日本代表が用いたことで知られるようになった。