<記者の目> 追い付かれ、引き分けたイラク戦の13日に31歳になった本田が、試合後に「若い選手が自由にやれていない部分がある」と声を上げた。監督は押しが強い。そのキャラクターは理解しつつ、それでも「もっと自由にやっていい。持っている力を半分しか出せていない選手も多い」。ともに先発した久保、遠藤、昌子らに向け、大きな期待と可能性を信じるからこそのエールだった。本田がこう言うと、時の流れを感じる。

 8年前、まだ代表でほぼ実績ゼロだった金髪の23歳は、09年9月の国際親善試合オランダ戦で絶対的な存在だった中村俊輔(現磐田)とFKのキッカーをめぐって衝突した。強烈な個性で、そこからのし上がった歴史がある。

 本田自身、その「若い選手」である久保に定位置を奪われた。それでも、この合宿中に「最初に代表に来た時の感覚に戻れている」と話した。中村に挑んだあのころを思い出し、再びポジション奪取を自らに課している。だから出てきた言葉。若手の奮起と自立こそW杯出場への重要な要素となる。それは間違いない。

 「今どきの若いもんは…」といった世間でよくある言い回しを極端に嫌う本田がこう言うのだから、責任も持つべきだ。若手に自由にやらせてあげられるくらいの環境、試合展開を本田が整えてやるべきだろう。【八反誠】