ACミランを退団する日本代表FW本田圭佑(31)が実質的なオーナーを務めるカンボジア2部の「ソルティーロ アンコールFC」が来日し、18日から2日間、千葉・幕張の「ZOZOPARK HONDA FOOTBALL AREA」で本田と合同練習した。

 カンボジアのサッカーは発展著しいが、国際サッカー連盟(FIFA)ランキングでは日本45位に対し、174位とまだまだ大きな差がある。

 両国はW杯ロシア大会のアジア2次予選で同組となり、15年にホームとアウェーで計2度対戦。日本が3-0、2-0と2試合とも本田の得点もあり完勝している。そんな縁のある両国を、本田がつなぎ、育成に一役買っている。

 本田はもう10年近くも、海外で暮らしプレーしている。異国、異文化という壁はあまり感じないようだが、カンボジアの選手たちは違う。

 サッカーをし、国を股に掛けるということはどういうことなのか。今回の来日が初の海外行きという選手たちの「珍道中」から、サッカー界のまたひとつの現実に迫る。

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【空港・機内編】

日本に向かうソルティーロ・アンコールFCの選手たち
日本に向かうソルティーロ・アンコールFCの選手たち

 ほぼ全員が初めてパスポートを取得し、初めて国際線に乗って海外へ。テンションは最高潮。機内でスマホを使って写真を撮る撮る…。ついに、客室乗務員から怒られてしょぼん。

日本に向かう飛行機に搭乗。初体験に笑顔
日本に向かう飛行機に搭乗。初体験に笑顔

 離陸直前、シートベルトを締めるようランプが点灯。しかし全員が緊張感マックスで、もよおしてしまう…。構わずトイレに立ち、客室乗務員におしかりを受ける。


【初めての日本=屋外編】

来日し、生まれて初めて自動改札を通過する
来日し、生まれて初めて自動改札を通過する

 電車も初めて。自動改札機に手渡された切符を入れたが、出てきた切符を取らずに通過。自動改札が詰まり、長い列に。

 切符の自動販売機に心奪われ、タッチパネル式の液晶画面にタッチタッチ。ここでも撮影会が緊急開催。 いつ、どんな時でも、24時間サッカーについて考えるのが、本田イズムだからなのか…。トレーニングは怠らない。電車にあるつり革や手すりで、いきなり懸垂開始。同行スタッフに、おしかりを受け、しょぼん。

練習の合間に浅草に出掛け、日本を知る
練習の合間に浅草に出掛け、日本を知る

 忙しい日本人。電車の中で寝ている乗客を見て、ビックリ。初日はこんな所でスヤスヤ寝るなんて、とカルチャーショックを受けるも、見るものすべてが新鮮な日本で疲れたのか、2日目以降は、全員が電車移動中に寝てしまう…。座り心地もいいようです。

 道にゴミが落ちていないことにビックリ。日本人の歩くスピードに驚き、電車が時間通りにやって来ることにまたビックリ。感激で、思わず声が出るほど。


【初めての日本=屋内編】

練習後、生まれて初めて自動販売機で飲み物を買う選手たち
練習後、生まれて初めて自動販売機で飲み物を買う選手たち

 滞在先は寮。もちろん、土足厳禁ですが、何度注意されても、20年近く育った癖は抜けないようで、いつも土足でドカドカと…。

 疲れを癒やすはずのお風呂もひと苦労。風呂での裸の付き合いという文化がないため、初日は恥ずかしがって、大変。何と、電気を消して真っ暗にして、全員でやっと入浴。“暗浴”とでもいうのでしょうか。

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 こんな日々を過ごし一気に成長した選手たちは、ピッチでも本田を驚かせる吸収力と成長ぶり、潜在能力を示しました。

実質オーナーの本田の指示のもと、練習する
実質オーナーの本田の指示のもと、練習する

 2日間一緒に練習し初日の様子を映像分析し2日目にフィードバックするなど本田は熱心に指導した。“教え子”の取り組みに「感じとしてはポジティブ」と感想を語り、来日させた選手たちの姿勢、将来性を高く評価し、喜んだ。

 ソルティーロ・アンコールFCは1部昇格を目指しシーズンを戦っており、前半戦を終え3位と好位置につけている。現在は7月16日再開の後半戦に向けカンボジアに戻り、練習に励んでいる。

 6月に日本で得た経験は、大きな武器となるだろうか。選手たちがひとまわりもふたまわりも、たくましくなっていることは間違いない。

(写真はすべて(C)HONDA ESTILO)