FW横山久美(24)が2試合連続の決勝点を決め、会場を沸かせた。0-0の後半27分に途中出場し、迎えた後半39分。中央でMF長谷川がボールを運ぶと「(パスを)もらう前に、わ、これくるわって思って」。予想通り絶妙なパスが足元へ。「絶対決めなきゃって。ひとつ前に打とうとしたけど相手がいたから切り返した」。あとは無心で右足を振り抜いた。ボールはゴール右上に豪快に突き刺さり「びっくり。出来過ぎ。練習の成果が出て良かった」と喜んだ。

 全5試合での出場時間は2試合分にも満たない。それでもチームトップの4得点。高倉監督は「彼女はゴール前でスペシャルなものを持っている。合宿の中で少しずつ調子を上げて最後は結果を出してくれたので、私自身も非常にうれしい」とたたえた。「これにうぬぼれず、ワールドカップ(W杯)でいい結果を出したい」。ドイツのフランクフルトでしのぎを削る期待のFWが覚醒した。

 なでしこの背番号「8」が躍動した。FW岩渕真奈(25)が全5試合フル出場2得点の活躍で大会MVPに輝いた。A代表公式大会での全試合フル出場は初。08年のU-17W杯で卓越した技術を披露して世界を驚かせ、同じくMVPを獲得した時の輝きを取り戻した。

 活躍の陰には、16年リオオリンピックアジア最終予選後に、背番号「8」を受け継いだ元日本代表MF宮間の存在があった。10年に16歳でA代表に招集され、当時から目をかけてくれた大先輩。宮間が同予選を最後に代表から遠ざかり、現在はクラブも無所属の状態が続いている中でも頻繁に連絡を取り合っていた。岩渕は「(宮間は)大好きな選手。宮間さんのあとの8番はプレッシャーも大きいし、タイプも違うけど、1歩でも近づけるように頑張りたい」と話す。今大会中も「頑張ってね」と連絡をもらい、発奮した。

 度重なるけがに泣かされた岩渕はもういない。チームとしても個人としても復活を印象づける大会となり「そういう大会で優勝できたことは自信になるし、続けないと意味がないので、続けていきたい」と言い切った。憧れの先輩からの後押しも受け、今度は岩渕がなでしこをけん引する。