戦いを終えた吉田の目はうるみ、言葉がすぐには出てこなかった。

「ホッとしてます。これでとりあえず、もうちょっと代表でプレーできるなと思いました。本当にうれしいです」

サッカー日本代表の主将、DF吉田麻也(33)が、7大会連続のW杯切符を守り抜いた。1月上旬に右太ももを痛め、前回ホームの2試合を欠場していたが、大一番にしっかり間に合わせた。前主将MF長谷部誠(38)の代表引退を、涙を流して惜しんでから約4年。たくましく成長した吉田の腕に、森保監督が託したキャプテンマークが輝いていた。

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試合前の円陣。語りかけたのは攻めの姿勢。「これまで、アウェーでオーストラリアに勝ってない。必ず勝ってW杯を決めようと話をしました」。攻め上がる相手を体を張って止めながら、仲間のゴールが生まれるのを信じた。

「相手が出てこなければいけない状態で0-0までいったので、大きなスペースが後ろにできた。三笘選手がうまく点を決めてくれた。プラン通りで良かったです」

1月上旬に右太もも裏を痛め、最終予選の大事なホーム2試合を欠場した。「このタイミングでけがをしてしまった自分に殺意すら覚えました」。自身のSNSに激しい言葉を並べたのも、責任感の表れ。大一番のこの日は、最終ラインに頼もしい男がいた。

チームを束ねるということ-。その計り知れないプレッシャーを、痛いほど知っている。「監督の次に責任を取らないといけないポジション。キャプテンは1人だけですから」。前回の18年W杯ロシア大会。3大会連続で主将を務めた長谷部が代表引退を決めた。これまで何度もついて行った頼もしい背中。こぼれる涙は止まらなかった。

重責を引き継いで初めて臨んだ19年アジア杯。カタールとの決勝で自らのハンドがPKを招き、追い上げムードがしぼんだ。ピッチサイドで立ち尽くしていたのは、森保監督だった。

同じ長崎出身。心を尽くすのは、それだけが理由ではない。1人1人の将来を大切にし、移籍直後などの選手は招集を見送ってきた指揮官。「みこしを担ぎたい」。だから、熱い言葉が自然と口をついた。

昨年10月のアウェー・サウジアラビア戦。吉田は、差別的なジェスチャーをしたサポーターに鬼の形相で怒りをあらわにした。許されない行為を前にチームを束ねる者の強さがあった。

森保監督に守られ、吉田主将に率いられ、一丸で険しい道のりを歩んできた。修羅場を乗り越えたものにしか分からない強固な絆がある。4年前に託されたキャプテンマークは、その証しだ。【磯綾乃】

◆日本の国際Aマッチ通算出場数 DF吉田麻也がオーストラリア戦で114試合となり、長谷部誠と並び歴代6位に浮上。最多はMF遠藤保仁の152試合で、2位はオーストラリア戦で134試合となったDF長友佑都。3位DF井原正巳(122試合)、4位FW岡崎慎司(119試合)、5位GK川口能活(116試合)と続いている。