日本(FIFAランキング24位)が、東アジアE-1選手権で韓国(同28位)を3-0で下し、13年大会以来、2度目の優勝を果たした。0-0で迎えた後半4分に、MF相馬勇紀(25=名古屋)が頭で決め、DF佐々木翔(32=広島)、FW町野修斗(22=湘南)も続いた。ワールドカップ(W杯)カタール大会前、国内最後の代表戦で、森保一監督(53)が初タイトルを手にした。

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両膝でスライディングを試みた相馬は、尻もちをついた。名古屋の選手にとって、慣れ親しんだはずの豊田スタジアム。ゴールパフォーマンスは失敗に終わった。「今年はまだ、ここで得点を取っていなかったので、何とか取れて良かった」。今季リーグ戦1得点は、アウェー清水戦。ブランクを経て“庭”で、はしゃいだ。

思いを頭に込めた。0-0の後半4分。ペナルティーエリア手前でボールを持った藤田から、ファーサイドへ柔らかいクロス。ドンピシャのタイミングで、走り込んだのは相馬だった。ヘディングで、ニアサイドをぶち抜き、先制点をもたらした。「ヘディングは毎日、グランパスでどれだけ海外の選手みたいに強いボールをヘディングできるか練習していた。半年練習して初めて成果が出た」。前回19年大会は、韓国相手に0-1で敗れてタイトルを逃した。相馬は、その試合に途中出場していた1人だった。「日韓戦は歴史も長く。3年前の悔しさも自分は知っていたり」と雪辱を果たした。

“同期”の昇進に、負ける訳にはいかなかった。同じ東京五輪メンバーのMF三笘、田中は海外クラブで羽ばたき、日本代表にステップアップし、W杯アジア最終予選では得点もマーク。相馬は最終予選メンバーに選ばれず、昨夏は同じ舞台でメダルを目指していた仲間との距離が遠くなっていた。「同じ土俵に立ててはいないと思います。客観的に見て彼らの方が戦っている舞台も活躍するステージも上。リスペクトしながらも負けない気持ちは持っている」と今大会にかけていた。

「柿谷ロード」を歩む。同じ名古屋の柿谷は、13年のE-1選手権で3得点を挙げ、14年W杯ブラジル大会メンバーを勝ち取った。当時のザッケローニ監督が「結果を残した選手をW杯に連れて行く」と話し、柿谷は体現してみせた。相馬は「この大会に臨む前に、自分の道を自分で切り開くとテーマに決めていた」と柿谷と同じ大会3得点を挙げ、MVP&得点王に輝いた。次への可能性を示した。「この大会での成功体験がすごく大きかった。サイドハーフをやって、新しいことにどんどんチャレンジできて幅が広がったと実感していた。W杯でスペイン、ドイツのトップレベルとやった時にも通じるぐらいのレベルアップが必要。今はどうこうより、ここから先、成長していきたい」。何が何でも、滑り込む。【栗田尚樹】

○…韓国は大会4連覇はならなかった。引き分けでも優勝だったが、若い日本の力に押され、ほとんどチャンスらしいチャンスを作ることなく完敗した。序盤は熱心に指示を飛ばしていたパウロ・ベント監督も、終盤は力なくベンチに座り込み、うなだれていた。

○…森保監督 自身初タイトルを手にした。「選手たちが、自分たちの価値を示す、価値を上げるというこの大会での目的を持って、本当によくやってくれました」とたたえた。W杯前、最後の国内での代表戦。本番へ向けて「収穫はあります」と大きくうなずき、「日本サッカー歴代史上最高のベスト8以上を目指します」とサポーターに誓った。