ワールドカップ(W杯)カタール大会の開幕と、日本の1次リーグ初戦まで1カ月を切った。7大会連続7度目の出場。日本代表の目標は、初の8強進出だ。森保一監督(54)の目標でもあり、日本サッカー協会も本年度の予算を8強入りを想定して組んでいる。

1次リーグでドイツ(11月23日)、コスタリカ(同27日)、スペイン(12月1日)と同じ厳しいE組に入った。世界基準からすると、2強2弱で、前評判は高くない。そんな評価を覆し、波乱を起こせるか-。まず、日本サッカー界のトップ、日本協会の田嶋幸三会長(64)に聞いた。【取材・構成=盧載鎭】

日本にとっては死の組。ドイツ、スペインという優勝経験国と同じ組に入った。現実は厳しい。世界中のどの専門家に聞いても、異論はないはずだ。では、日本サッカー界のトップはどう考えているのだろうか。

田嶋会長 98年から(協会の一員として)代表チームに直接的、間接的に関わってきた。その中で、ここまでの強い思いは、今回が初めて。選手も監督もマジで、本気で「オレたち、いくぞ!」と思っている。前回(18年ロシア大会1次リーグ初戦の)コロンビア戦は運もあったし、西野監督もうまく(ピークに)持っていって、初戦に勝った。あの時はみんな、半信半疑だった。でも今のこのチームなら「よし! オレたちならいけるぞ」という感覚をみんなが持っている。それは、僕がそばにいて見て、聞いて、肌で感じている。「よし! 会長のオレもそう思わなきゃ」と思わせるくらいの強い気持ちを、選手も監督も、持ってくれている。そういう意味では、今までのW杯の中で一番、「勝つぞ!」という意識が高い。

確かにメンタルは大事だ。ただ、精神力だけ、気持ちだけで乗り越えるには、あまりにもドイツとスペインは強く見える。日本は未到の8強が目標だが、W杯で優勝した実績がある2チームは当然、今大会でも優勝を目指している。それほどに、チーム力は高い。

田嶋会長 勝ち負けは、分からない。向こう(ドイツやスペイン)が勝つ可能性が高いのは、分かっている。でも、今の日本なら10回戦って過去に7~8回負けたとしても、今は5~6回負けて、3回引き分けて、1~2回は勝つかもしれない。間違いなく、そう思えるほどに、割合が増えてきた。実際、僕が一番心配しているのは(第2戦の)コスタリカです。ドイツとスペインとの対戦は、間違いなくベストの戦いをすると確信している。その中で、コスタリカ相手にそのモチベーションを維持できるかどうか。2戦目にどう戦うか、が僕はこのチームのキーだと思っている。みんな「コスタリカには勝てるんじゃないか?」と思っているはず。ドイツ、スペインと戦う気持ちと、コスタリカと戦う気持ちが、もし違っていたとしたら、そういうところに一番のスキが出てくる。(コスタリカは)GKが良くて、ディフェンシブでカウンターを狙ってくるチーム。日本はアジアの予選でそういうチームに苦戦してきた。1次リーグ突破のカギとなるだろう。

ただ、そうは言っても、1次リーグ突破-8強入りを見据えると、ドイツとスペイン相手に、勝ち点がとれるかどうか。日本は海外組が増えたが、強豪2チームの選手が所属するクラブと、日本選手が所属するクラブのレベルの差は、あまりに大きい。

田嶋会長 クラブのレベルだけだと、日本は勝てないと思われるだろう。でも我々は、個で戦うチームではない。いわゆる、コレクティブというか、集団で戦うことにたけている。陸上の400メートルリレーで、100メートルの個人記録だけではアメリカが1番かもしれないけれど、日本はしっかりした準備をして、いい勝負ができる。特に初戦のドイツ戦は、(海外主要)リーグ戦終了後、1週間しか調整の時間がない。日本がいい準備をして臨めば、勝つ可能性を十分に上げていくことはできるし、チャンスはある。(つづく)

◆田嶋幸三(たしま・こうぞう)1957年(昭32)11月21日、熊本市生まれ。筑波大-古河電工で活躍し日本代表としても国際Aマッチ7試合1得点。引退後はドイツのケルン体育大に留学し、コーチ資格を取得。U-17(17歳以下)日本代表監督、日本協会の技術委員長、専務理事などを歴任。10年から副会長、11年からアジア・サッカー連盟(AFC)の理事、15年に日本人4人目の国際サッカー連盟(FIFA)理事となる。16年1月に初めて行われた日本協会の会長選で対立候補の原博実専務理事(当時)との一騎打ちを制し、同年3月27日に日本協会の第14代会長に就任。現在3期目。