【済南(中国)4日=鎌田直秀】オーストラリアキラーのFW永里優季(24=ポツダム)の先発出場が濃厚となった。なでしこジャパンは今日5日、ロンドン五輪最終予選第3戦で、出場枠を争うライバルオーストラリアとの天王山を迎える。過去オーストラリア戦9戦5発と抜群の勝負強さを誇る永里優を、満を持して投入する可能性が高まった。。FIFA(国際サッカー連盟)ランク9位の難敵を退ければ五輪切符に王手、逆に負ければ一気に圏外の3位転落の可能性も秘める。今予選最重要ゲーム。韓国戦で先発出場した主力組はこの日、ホテル内で調整。永里優らは約1時間、済南オリンピックセンターで調整した。

 永里優のパワー、コンタクトプレーでの無類の強さが、オーストラリアDF陣を打ち破る。体格に勝るオーストラリア守備陣を背にボールを受けても、永里優は体力差で1歩もひけをとらない。そこから一瞬のスピードで反転し、ゴールを狙える。その強さが、9戦5発の最大の要因だ。

 「5得点すべて覚えていますよ」。当然、ゴールへのイメージは膨らんでいる。「もちろん得点にはこだわりたい。明日も最初から出るつもりです。私の力を発揮できる状態にあります」。永里優はいつものように、自信に満ちたコメントを残した。この日の練習でも左右両方で豪快なシュートを決め、佐々木監督の前で好調をアピールした。

 日本に比べ芝の深いピッチに足をとられる選手が多いが「デコボコして長い芝は私に合っている」とまったく意に介さない。タイ戦ではシュートブロックした相手DFドゥアンアパが左膝を痛め、病院送りとなるほどの強さを見せた。

 中1日での3戦目オーストラリア戦は、何より先制点が重要。佐々木監督は「最初からガツガツ点をとりに行くときは永里だな」とし、永里優のフィジカルの強さに期待を示した。

 この試合に勝てば出場権に限りなく近づく。たとえ第4戦北朝鮮戦(8日)に引き分けても、中国が5日タイ戦、8日オーストラリア戦のどちらかで引き分け以下ならば、2位以内が確定し、出場権をつかむ。反対に、負ければ北朝鮮、そして得失点差でオーストラリアにかわされ、一気に単独首位から3位転落の危機も。絶対に負けられない、必勝の試合になる。

 佐々木監督

 最大のヤマ場。タイには申し訳ないが、全チームがタイから勝ち点3を取ると思う。(我々は)実質まだ1勝。必ず勝たないといけない。サッカー的にはたいしたことはないが、パワー、スピード、セットプレーは欧州的。体格差に耐えながら自分の力を出せば問題ない。

 永里優はW杯ドイツ大会初戦ニュージーランド戦で先発し、先制ゴールを決めたが、その後は不発に終わった。準決勝スウェーデン戦からは先発落ちし、尻すぼみで大会を終えた悔しさもある。

 その逆境が人間的成長を促した。「W杯後から気付きました。私も仲間の言葉に救われた部分も大きい。チームをまとめるプレーもしないと。私自身に変化を与えてくれたきっかけになった」。韓国戦ではハーフタイムに感じた修正点を仲間に伝え、チームを側面から支えた。

 今大会から妹のFW永里亜が新メンバーとして加わった。居残り練習で、姉のシュートを黙々とボール拾いをする妹の姿があった。永里優が燃えない理由はどこにもない。