今大会初出場のMF井手口陽介(19=G大阪)が一発回答だ。1点リードの後半8分、右サイドをドリブル突破したMF南野のパスを、丁寧にコースを狙って決めた。

 5人を引き付けた先輩に「うまく拓実君(南野)が中に切り込んでくれた。ゴールに流し込むだけでした」と感謝。ゴール正面で得点のにおいをかぎつけ、したたかに、フリーになってタイミングを待っていた。ネットが揺れると、2戦目まで座っていたベンチに走った。「みんなが待っててくれてうれしかった」。仲間と喜びを分かち合った。

 福岡生まれ。母亜紀子さん(48)が「可能性を広げたい」と大阪へ引っ越し、名門G大阪ジュニアユースに入ることができた。先輩FW宇佐美をして「ポテンシャルは怪物級」と評す逸材は強心臓だ。この日、ホテルで先発抜てきを告げられた。初めての出番。緊張して硬くなるどころか出発前まで携帯ゲームに熱中。スタッフから怒られたという。ともに中盤で先発したDF三竿とチームで2人だけの19歳。三竿より誕生日が約4カ月遅くチーム23人の“末っ子”は、とにかく大物感たっぷりだ。

 試合直後のインタビューは緊張気味だったが、井手口家の三男坊は普段もちょっぴりやんちゃ。G大阪では長谷川監督から遅刻が原因で怒られた時期もあったが、昨年4月にリーグ戦デビューを飾ってグンと成長。今では「陽介が一番伸びた」と信頼を得ている。球際の強さ、正確な長短のパスで存在感を発揮。相手の中盤に仕事をさせなかった。1、2戦目は出番がなく「すごく悔しい気持ちがあった」。2-0とした後、不運な判定のPKから今大会初失点。結果的にまだ10代、チーム最年少の2点目が大きかった。【木下淳】