【ドーハ27日】アジア王者としてリオへ乗り込む。日本は、五輪切符を懸けた26日の準決勝イラク戦で勝利。FW久保裕也(22=ヤングボーイズ)が先制点を挙げ、MF原川力(22=川崎F)が後半ロスタイムに決勝弾を放つ劇的な幕切れだった。6大会連続五輪出場権をつかんだ激闘から一夜明け、チームは宿舎で回復トレーニングを行った。30日の決勝はアジアの永遠のライバル、韓国と戦う。

 歴史が変わった瞬間だった。一夜にして世界に「原川」の名を刻んだ。ヒーローは祝福のウオーターシャワーを浴び、仲間にもみくちゃにされた。1-1の後半48分、MF南野のクロスをGKがはじき、こぼれ球をトラップ。「枠内に飛べ!」。祈るように放った左足ミドルシュートがゴールに突き刺さった。

 「人生で一番気持ち良い。この経験ができて、これからの試合の中で違った景色が見えるかもしれない」

 チームは一体となった。遠征中、手倉森監督は宿舎のミーティングルームを開放して選手の訪問を待ち、自室に初めて1人ずつ呼びもした。原川は食事会場で指揮官に呼び止められ、「力と矢島はいぶし銀だ。困ったときにお前らがいるから俺は安心している」と言葉をもらった。選手同士も開幕前に極秘でドーハ市内の和食店で決起集会を開き、一丸を期した。結成2年で初めてのことだった。

 いよいよアジア王者を懸けた決勝戦を迎える。相手は宿敵韓国。手倉森ジャパンでは14年仁川アジア大会の準々決勝で0-1で敗れている。12年のロンドン五輪。1世代上が44年ぶりメダルを懸けた3位決定戦で敗れたのも韓国だった。MF遠藤は「あとは韓国に勝つだけ」。指揮官も「優勝してから泣こうと思ってる。いいオーダーを組めるように練習と回復をさせて、次に挑みたい」と頂点のみを見つめた。

 「世界を知らない世代」と言われてきた。1人もU-20W杯の経験がない。今大会3得点の久保は「そういう声は知っていた。エネルギーにしてやってきた」。イラク戦では前半26分にFW鈴木の左クロスに「信じて走り込んでいた。触るだけだった」と、滑り込んで先制点を挙げた。準決勝前、ミーティングでゴール集の映像を見てモチベーションを上げていた。あと、1試合。今は、優勝して「世界を-」と呼ばれた悔しさを晴らすことが何よりの発奮材料だ。アジア王者の称号をリオへの手土産にする。【小杉舞】