【手倉森監督への推薦状】

 リオデジャネイロ五輪を目指す手倉森ジャパン(U-22日本代表)の、隠し玉になる男かもしれません。甲府の大卒ルーキーFW伊東純也(22=神奈川大)が鹿島戦で初スタメン初ゴール。後半2分、ピッチ中央のFW阿部拓から出た縦パスに反応し、爆発的に加速。一瞬でロンドン五輪代表DF山村の背後を取り、胸トラップから右足で豪快なシュートを蹴り込みました。

 チームの連敗を6で止める決勝弾。最下位甲府の樋口監督が「うちは(押し込まれるため)ボールを奪う位置が低い。前への推進力が課題だったが、伊東は1人で前に運べる」と認める速さで、流れの中からのゴールは今季初。まさに伊東1人で鹿島を食いました。

 関東大学リーグ2部出身で全国的には無名ですが、3年時に得点王(17点)、4年時にアシスト王(12アシスト)を獲得したFWです。「前への突破が自分の武器」と話すように、後半34分には左サイドを独走。走りながらの正確なパスでFWアドリアーノのクロスバー直撃シュートを演出しました。同45分にはピッチの真ん中をぶっちぎり。自陣ゴール前で奪った球を誰にも追いつかれることなく相手ゴール前まで運び、決定的なパスを出しました。追加点はならなかったものの完全に崩し切りました。

 「50メートルとか1度も測ったことない。(出身地)横須賀市のリレー大会で2位に入ったくらい」と本人も正確には知りませんが、U-22代表担当の自分の目測では同代表最速の鈴木、浅野(50メートル走5秒9)と匹敵。東京FW武藤が2月の練習試合で対戦した際「めちゃくちゃ速い選手がいた」と驚いたというスピードで、日本協会関係者も「あの快足はチェック済み。手倉森監督も把握しているはず」と明かす隠し玉候補です。

 ベルギー1部スタンダールのFW小野とは逗葉高(神奈川)の同期。神奈川大ではU-22代表の主将MF遠藤と同学年でした。「(小野は)高校の時から活躍してたし(遠藤)航の代表戦も刺激になる」。遅咲きで「代表は考えたことない」と無頓着ですが、メンバー選考で大まくりする可能性を秘めた健脚。掘れば当たる予感です。【木下淳】

 ◆伊東純也(いとう・じゅんや)1993年(平5)3月9日、神奈川県横須賀市生まれ。小原台小1年の時に鴨居SCで競技を始める。横須賀シーガルズ、逗葉高から神奈川大。4年時に関東2部2位で1部へ導いた。同年、全日本大学選抜入り。昨季は甲府の特別指定選手で今季入団。足の速さを表すエピソードを聞かれて「絶対に間に合わないはずの電車の乗り換えに成功した」。176センチ、68キロ。利き足右。血液型A。