青森山田のU-18日本代表GK広末陸(2年)が、劇的勝利のフィナーレを飾った。ロスタイムに2点差を追いつき2-2で迎えたPK戦。5人目のキッカー、桐光学園のエース小川のシュートを右手で止め、5-4の勝利を呼び込んだ。2年生ながら、攻撃の起点にもなれる精度の高いキックを持つ守護神。驚異の粘りを見せた攻撃陣にスーパーセーブで応えた。東北勢最後のとりでとなった同校は悲願の初優勝に向け、明日5日の準々決勝で富山第一と対戦する。

 青森山田の劇的なPK戦勝利を呼び込んだのは、GK広末の右手だった。奇跡的なロスタイム2発でもつれ込んだPK戦。先攻の桐光学園5人目として立ちはだかったのは、この試合で2点を許していた敵のエース小川。広末は、11メートル先のボールを挟んで向かい合いながら、小川の気をそらすように左手をブラブラさせた。「左に気を引かせ、右に誘い込もうと思った」。狙い通り右に飛んできたシュートを、横っ跳びで伸ばした右手ではじいた。

 ロスタイムわずか3分間で追いつき突入したPK戦。その展開に2年生GKは緊張するどころか肝が据わっていた。「失うモノは何もない。僕らは命拾いした試合だったんで。本来なら負けている展開の試合。全員で最後まで諦めないという、今年の山田のいいところが出た」。勝利の風は完全に青森山田へ吹いていた。あとは動じることなく任務を遂行するだけだった。

 GKであり、2年生でもありながら、PK戦では4人目のキッカーを務め、きっちり左へ決めるほどキックに自信がある。もともとフィールドの選手で、小学校時代はFWだった。J1東京のスクールで選抜クラスに入ったのをきっかけにGKに転向。持ち味は自然とキックになった。「攻撃はGKから」がモットー。実際に、後半45分の2点目も、広末が放った鋭いロングキックからスローインとなり同点弾が生まれた。

 反省も忘れない。「初戦の大社でも桐光にもエースを警戒していたのに2点ずつ決められた。次は相手(富山第一)のエースを封じ込めないと」。劇的勝利の喜びを忘れ、次へと目を向けた。【栗田成芳】

 ◆広末陸(ひろすえ・りく)1998年(平10)7月6日、東京都生まれ。小学校時代は中北SCに所属しながら、J1東京のスクールでは選抜クラスに入ってプレー。東京U-15深川からGKに転向し、青森山田に進学。1年生だった前回大会にも出場。家族は両親、兄、弟。183センチ、78キロ。血液型O。