浦和レッズがペトロビッチ監督の進退をかけた一戦で勝利を手に入れた。ホームでアルビレックス新潟を2-1で下した。前半に先制を許す苦しい展開も、後半にMF阿部、FWラファエル・シルバのゴールで逆転した。5日の川崎フロンターレ戦に敗れ、ミハイロ・ペトロビッチ監督(59)が負ければ辞任すると宣言した直後の一戦。最悪の事態は逃れたものの、守備陣の不安は払拭(ふっしょく)できなかった。

 試合終了とともに、ペトロビッチ監督はスタッフと輪を作って喜びを分かち合った。劣勢から2点を奪っての逆転。火付け役は阿部主将だった。後半29分DF森脇のミドルシュートがポストに当たってこぼれたところを右足ダイレクトでゴール左上へ。嫌な雰囲気を吹き飛ばす一撃でチームを波に乗せ、同34分にラファエル・シルバが追加点。苦しんだ末の勝利に指揮官は「勝利しなければいけないという我々の目的は達成された」と振り返った。

 貫くことを選んだ。5日の川崎F戦は1-4で大敗。試合後ペトロビッチ監督はサポーターに対し、連敗なら辞任すると発言したが、常日頃から選手には「結果が出なければ自分が去ればいい。だから楽しくやってくれ」と言葉をかけてきた。進退に関わる一戦の前日には日本代表DF槙野を紅白戦で控え組に回すなどさまざまな可能性を模索したが、新潟戦は主力にメンバー変更はなかった。不振にあえいだ主力組を信じた。そして結果は出た。

 今年1月の沖縄キャンプ中、母を亡くした。2日前に電話した際、母国セルビアに帰ろうとすると、母からこう言われた。「あなたはキャンプ中。いかにチームを愛しているか分かっている。だから来なくていい」。これが最後の会話だった。過去には6億円を超える報酬のオファーもありながら、浦和に残り、6季目を迎えた。指揮官は「浦和で10年は戦いたいという気持ちを持っている。クラブとの絆、敬意は深い」と強調する。

 最下位相手にホームで辛勝。課題は残るが、何よりも大事な勝ち点3を手にした。「私は浦和を愛している。最後の一滴までクラブのために力をそそぐ」。指揮官は声を大にした。不振の中で一丸となった浦和が、泥くさく息を吹き返した。【岡崎悠利】