仙台育英が東北学院に1-0で勝利し、5年ぶり32度目の全国切符を手にした。前半にDF後藤万輝(かずき=3年)が、ロングスローをバックヘッドで流し込むミラクルゴールを決め、勝利を呼び込んだ。これで新人戦、県総体に続き3冠を達成。県最多の全国出場を誇る古豪が、復活の雄たけびを上げた。

 後藤の思いもよらぬゴールが、試合を決めた。0-0で迎えた前半32分。DF石川巧実主将(3年)のロングスローにニアサイドで反応。「チャンスになればいいなと思いボールを流した」と、バックヘッドでゴール前に流したボールが、そのままゴールに吸い込まれた。「振り向くとボールが相手GKの頭を越えていくのが見えた。お互いに点が入らない状況だったのでセットプレーから流れを変えることができてよかった」。ゴールライン付近の角度のない位置から、値千金のゴールを決めると、歓喜するイレブンを引き連れ、応援スタンドに向かって一直線に駆けだした。

 開幕直前の練習で、チームメートと激突し右目を打撲。まぶたが腫れ、視界の悪い状態で大会に臨んだ。「センターバックの距離感を取るのが難しかったが決勝までにうまく修正できた」と完封に貢献。スタンドには、楽天から6位指名を受けた西巻賢二内野手らクラスメートが応援に駆けつけていた。「ラインで頑張れと励ましてもらった。スタンドから応援してもらい力になった」と感謝した。

 最後は胴上げで宙を舞った、還暦を迎えた城福敬監督(60)は縁起を担ぎ赤いTシャツで試合に臨んだ。「後藤は頼もしい選手。最後の最後まで何が起こるか分からなかったが、守りきってくれた。還暦のいいプレゼントになりました」とヒーローをたたえた。試合前、士気を高めるためロッカー室でメッセージ映像を鑑賞した。母美樹さんから思わぬ応援メッセージに目を潤ませた。双子で生まれるはずだった妹が誕生前に力尽き「万人に輝きを」と願いを託され万輝と名付けられた。その名の通り、チームを輝かせた男は「全国大会まで、もっと力をつけて優勝を狙えるようにチーム力を高めたい」。今度は全国舞台で、再び輝きを放つ。【下田雄一】