Jリーグの夏の移籍市場が活性化しつつある中、J1湘南ベルマーレにも8歳の新加入選手が誕生した。

神奈川・藤沢市在住の小学2年生、高田琥太郎君。7月14日にBMWスタジアムで行われたヴィッセル神戸とのリーグ戦前に水谷尚人社長らと共に加入会見に臨み、契約書にサイン。期間は今季終了まで。高田君は湘南のユニホームを手に「うれしいです」と笑顔をみせ「選手とコーチに会えるのが楽しみ。『こた』と呼んでください」と初々しく自己紹介した。

一体どういうことなのか。その答えは、湘南が5月下旬にJクラブとして初の参画を発表した長期療養児の自立支援を行う「TEAM MATES」事業にある。

同事業は長期療養を必要とする子どもの自立支援とコミュニティーの創出を目的とし、児童が実際にスポーツチームの一員として加入して定期的に練習や試合等の活動に参加するもの。運営は「特定非営利活動法人 Being ALIVE Japan」が行っており、難病支援など幅広く子どもをサポートする事業を進める日本財団も助成している。高田君は血液のがんである悪性リンパ腫のため長期療養中で、入院先の病院で行われた湘南ベルマーレフットサルクラブに所属する元フットサル日本代表の久光重貴主催のフットサルイベントに参加したことが縁となり、今回の加入が実現した。

同事業に賛同し、高田君の受け入れを決めた湘南の水谷社長はクラブミッションとする「夢づくり、人づくり」が決断理由のひとつになったと説明。「我々は一度、クラブ存続の危機に面しましたが、その時は地域の人に支えられ、まだ歩かせてもらっています。その恩返したいと思い、話を聞いて即決させていただきました。ベルマーレだからこそ、琥太郎君の背中を押す。支えていただきたいなと思います」と力を込めた。

高田君は今後、月に2~3度、実際に湘南の練習に参加し、ミーティングなども経験する予定だという。すでに監督、選手らには説明済みで、水谷社長は「選手も感じるものはあると思うし、いろんなことにつながっていけたらいいなと思っています」と話した。同事業ではこれまで男子プロバスケットボールチームのアルバルク東京や、社会人アメリカンフットボールクラブのノジマ相模原ライズ、慶応義塾体育会野球部などで計8人の子どもの加入を実現。GK秋元陽太(32)に憧れているという高田君も「僕もGKの選手になりたい。みんなと仲良く練習したい」と活動を心待ちにしている。

地域に貢献し、クラブも成長する。「Jリーグ規約」には、チームがホームタウンとなる地域と一体となってクラブづくりを行い、サッカーの普及、振興に努めなければならないことが記されている。Jクラブでは湘南に続いてJ2モンテディオ山形も同事業に参画しており、子ども1人を受け入れて7月から活動を開始する予定だという。地域に根ざす湘南がサッカー界にもたらした新たな試み。その支援の輪は、着実に広まりつつある。【松尾幸之介】