急性白血病から復帰したDF早川史哉(25)が第29節ツエーゲン金沢戦(24日・デンカビッグスワンスタジアム)への出場をアピールした。新潟経営大との練習試合に90分間フル出場し、0-1の前半14分、同点のミドルシュートを決めた。

前日17日のホーム・ファジアーノ岡山戦では、16年4月24日の名古屋グランパス戦以来1210日ぶりにベンチ入りを果たしている。病を乗り越えての公式戦復帰が現実味を帯びてきた。

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こぶしを握りしめ、両腕を力強く突き上げた。「1000年に1度のいい感覚」。早川は会心の一撃の余韻に浸った。「練習試合に出始めてから初めての得点。喜び方も忘れていた」と”今季初ゴール”に照れ笑いした。

右サイドバックでスタメン出場。1点ビハインドの前半14分、右サイドでのMF渡辺凌磨(22)とのパス交換からミドルシュート。「(田中)達也さんが『シュート!』と声をかけてくれた」。チームメートの声に後押しされ、左足を思いっきり振り抜いた。

前日の岡山戦は、16年4月に急性白血病を発症後、3年4カ月ぶりにベンチ入りした。出番はなかったが、「ワクワク感と、いい意味での恐怖感を味わった。ベンチにいないと分からない」。それをすぐに実戦に落とし込んだ。判断や試合のテンポなど、前日の感触を意識して臨んでいた。

90分の中で、守備位置は右サイドバックに始まり、センターバック、ボランチと変わった。持ち味の多様性も発揮。「サイドバックはダイナミックさが必要。そこを見せられないとチームのパーツになれない」。実感としてリーグ戦をイメージできた。吉永一明監督(51)は「ベンチ入りは大きな1歩。ただ、これからが大切なことは言わなくても分かっていると思う」。早川が試合出場の競争ラインに上がってきたことを認めた。

岡山戦後、知人の祝福メッセージがLINE(ライン)に70通ほど届いた。試合前には新潟の元主将、本間勲現スクールコーチ(38)が激励に来てくれた。「多くの人が応援してくれている。本当に感謝しています」。励ましの声に応える方法は試合で活躍すること。「次節以降、アピールして出場を勝ち取っていきたい」。届く位置まで近づいたターゲットを、手中に収めるための練習が始まる。【斎藤慎一郎】