藤枝順心が、女王の座を奪還した。神村学園(鹿児島)に1-0で競り勝ち、2大会ぶり4度目の優勝を飾った。後半15分、FW池口響子(3年)の今大会3点目で先制。終始主導権を握られながらも、この1点を守りきった。1回戦敗退に終わった昨夏の全国総体を契機に「常勝軍団」へと変貌を遂げたチームが、全国529校の頂点に立った。

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藤枝順心イレブンの笑みがはじけた。DF長江伊吹主将(3年)の合図で優勝トロフィーを掲げる。スタンドでは声をからした部員、バス7台で約250人が駆けつけた大応援団が、歓喜に揺れていた。長江は「夢がかなった。最高の1日になりました」と感無量の様子。“チーム順心”全員で喜びに浸った。

「耐えて、守って勝つ。1-0の勝利は、やってきたことが証明された結果」。多々良和之監督(55)の言葉が全てだった。90分間、主導権を握られた。決定機の数でも相手が上だった。それでも、後半15分だった。FW池口のクロスが、そのままゴール。ラッキーな形で奪った虎の子の1点を最後まで守りきった。

夏の屈辱が、チームを「勝ちきれる集団」に変えた。昨年8月に沖縄で開催された全国高校総体。1回戦で敗れた夜、宿舎で緊急ミーティングが開かれた。以前は、数人だけが発言するだけだったが、その日は、学年の垣根を越えて、全員が泣きながら意見を交わした。常勝と掲げる理想とは程遠かったチームの雰囲気と向き合い、全員一丸で勝利を目指すチームに変わるきっかけになった。

池口は「戦術の話をする予定だったけど、それ以前の問題だった。夏までだったら、今日は最後まで集中力が持たなかったと思う」と振り返った。MF金子麻優(3年)は「夏までは、失点したら落ち込んで、声が出なかった。雰囲気が悪かったけど、お互いに声を掛け合って、助け合えるチームになれた」と、胸を張った。悩んで、涙して、つかんだ2大会ぶりの栄冠だった。【前田和哉】