川崎Fが史上最速Vを決めた。2位G大阪との直接対決を5-0で圧勝し、4試合を残し2年ぶり3度目の優勝を飾った。今季は新型コロナウイルスの影響でリーグ戦が開幕直後から約4カ月も中断。見えざる敵の脅威の中、鬼木達監督(46)を中心に結束を深め、攻撃的な新システム4-3-3を進化。J1新記録の12連勝を含む2度の大型連勝で独走し、新型コロナ禍に大黒柱のMF中村憲剛(40)の引退発表など特別なシーズンを、わずか3敗で制した。

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就任4年目の鬼木達監督(46)の采配が光るシーズンだった。途中出場の選手による24得点は史上最多。昨季30点だった後半の得点は50点と大幅に増え、昨季は見られなかった逆転勝ちは5度成し遂げた。転機の1つは、7月のJ1再開1週間前に行った練習試合だった。

コロナ禍での過密日程が考慮され、今季のJリーグは交代枠が5人に拡大された。この影響を想像できていなかった指揮官だが、6月27日の湘南との練習試合で、衝撃を受けた。

鬼木監督 相手が5人交代して、一気に戦況が変わった。これまでは終盤に2点リードしていればある程度(勝敗が)見えていたゲームでも、これだけ人が変わるとゲームが変わる。これはマズイと思ったが、選手もいるし、逆に言えばチャンスだと思った。

東京五輪による過密日程に備えて、今季は選手編成を厚くして臨んでいた。“交代枠5人”の重要性に気がついた指揮官は再開後、見事な采配で連勝街道をひた走った。「強度の高いサッカーを見せ続けるために、多少よくても、体力が落ちたら次の選手」。FW小林は13点中8点が、MF三笘は12点中8点が途中出場での得点。選手層の厚さを効果的に生かした。

庄子GMも、鬼木監督の成長に目を見張る。昨季は指揮官のカードの切り方に疑問を抱き、試合後にミーティングをすることもあったが、今年は1度もないという。鬼木監督は「90分間自分たちらしい戦いをしてくれた。感謝しているし、誇りに思う」と、謙虚に感謝した。【杉山理紗】