ヴィッセル神戸が日本代表FW古橋亨梧(26)の2得点などで、奇跡的な大逆転勝利を収めた。敵地札幌戦は、後半1分の失点で0-3と敗色濃厚の展開。それでも古橋の同点弾を含む2得点などで、4-3とミラクル勝利をつかんだ。代表初選出のGK前川黛也(26)もPK獲得につながるロングキックを披露。代表前最後の試合でクラブ史に残る大逆転劇を演じた。

    ◇    ◇    ◇

後半1分に失点した神戸は、その時点で0-3と敗色濃厚だった。だが背番号11はあきらめなかった。1-3で迎えた同12分。相手バックパスを奪った古橋が、右アウトの技ありゴール。同22分にはMF佐々木の得たPKを譲り受け、執念の同点弾を決めた。

「(バックパスは)狙っていた。何が何でも決めたい気持ちだった。(PKは)今年は自分で蹴りにいくと決めていた。(MF山口)蛍さんに蹴れと言ってもらったんで」。本来ならPKを蹴る主将MFイニエスタが長期欠場中だった。

この日も前線からプレスをかける愚直な守備を貫徹した上で、昨年9月26日札幌戦以来の1試合2発。開幕戦以来5試合ぶり、今季6試合3得点は及第点だ。三浦監督は「相手が圧力を感じるスピード感はすごく重要」と、守備も手を抜かないエースを称賛した。

中大時代は5つのJクラブに入団を断られ、一時は地域リーグに進む可能性さえあった。最終的に当時のJ2岐阜に拾われ、18年途中に神戸へ。19年は10得点、20年は12得点と結果を残し、J1通算は80試合30得点までになった。

「俊足で相手守備の裏に抜けだす力は、当時から突出していた。でも最後のシュートが、ことごとく入らなかった」と高校時代の恩師、興国・内野監督。今は「精度がまったく違う」とうなる。努力の積み重ねで遅咲きの花が咲いた。

19年11月の親善試合ベネズエラ戦で代表デビューした。以来の日の丸へ、古橋は「これで勢いに乗っていける。アピールして試合に出て、結果を残したい」。この日、古橋が成功したPKはGK前川のロングキックを起点に佐々木がつかんだもの。親友とともに向かう舞台で今度は代表初ゴールを狙う。【横田和幸】

◆古橋亨梧(ふるはし・きょうご)1995年(平7)1月20日、奈良・生駒市生まれ。大阪・興国高ではC大阪ユース所属だった南野拓実と同学年。中大から17年に当時J2岐阜入団。本名「匡梧」から知人の助言で登録だけ「亨梧」に。18年8月に神戸移籍。19年11月ベネズエラ戦で日本代表デビュー。170センチ、63キロ。