女子サッカーWEリーグのINAC神戸レオネッサは26日、神戸市内で会見し、運営会社である「アイナックフットボールクラブ」の株式を譲渡すると発表した。全株式の3717株が、アスコグループから大栄環境へ譲渡される。チーム名や本拠地に変更はない。

会見にはアスコグループの社長で、INAC会長の文弘宣氏(73)、大栄環境の金子文雄社長(67)、INACの安本卓史社長(51)が出席。01年にINACを創設から23年に渡ってINACを率いてきた文会長は「維持することはできるが、それでは今のレベルを超えない。INACがより予算規模の大きなクラブになっていくために必要だと考えた。女子(クラブ)はつぶれるか吸収されるしかなかった。引き継ぐモデルになれば」と譲渡理由を説明した。

「『(創設から)20年間はつぶさない』と走ってきたが、このチームをより大きな資本力のある会社に引き継いでいただいて、発展させるという考えが湧き出てきた」という文会長は、引き継ぎ先を19年から探し始めたという。これまでに複数社から手が挙がり、その中には今回の譲渡(譲渡額は非公開)より金額の大きな話もあったという。それでも「本拠地変更が条件だった。それでは今まで培ってきたものがなくなってしまう」と断り、ベストパートナーを探し続けた。

今回オーナー企業になることが決まった大栄環境は、INACの練習場「神戸レディースフットボールセンター」と同じ神戸市の六甲アイランドに本部を置く79年設立の企業。廃棄物処理や資源循環の環境関連事業、有価資源リサイクル事業を主な事業とする東証プライム市場上場企業である。

サッカーとは直接関係なさそうだが、グループ企業の「三重中央開発」が、20年以上「伊賀FCくノ一三重」(現なでしこリーグ1部)のスポンサー企業を務めてきた実績がある。

1月にINACが日本一に輝いた皇后杯をスタンド観戦したという金子社長は「素晴らしい感動を与えるINAC神戸をたくさんのサポーター、スポンサーと一緒になって盛り上げていきたい。今後は世界に名をはせるようになるべきチームだと思うので、その支援をしていきたい」とサポートを約束した。

また、注目されたクラブ名については「社名を入れることはまったく考えておりません。今のINACの名前を将来的にも残していきたいと考えている」と説明した。

今回の株式譲渡発表について、当初はプレスリリースのみの予定だったが、INACの発案で記者会見を行うことになったという。文会長は「私と金子社長は、よくある会社同士の株式譲渡なので、発表だけで良いと思っていた」ということだが、安本社長から打診を快諾。会見終了後には「ファン・サポーター、スポンサーのみなさんに考えを伝えられる場ができて良かった。“ハッピーな譲渡”の事例が伝わってくれれば」と笑顔を見せた。【永田淳】