FC町田ゼルビアがサガン鳥栖を3-1で下し、4連勝で首位をキープした。U-23日本代表MF平河悠(23)が3アシストと全得点に絡んだ。開幕から4勝1分けと無敗のチームにあって全5試合にフル出場。黒田剛監督のもと、快進撃を続けるチームのキーマンとなっている。4月15日に開幕する、パリ五輪切符が懸かるアジア最終予選を兼ねたU-23アジア杯(カタール)でも活躍が期待される。

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アタッカー平河の守備が勝負を決めた。1-1で迎えた後半9分、相手のパスワークのほころびを見逃さなかった。鋭い出足でボールカットすると、ゴール前まで持ち込んだ。打つと見せて中央のFWオ・セフンにパス。勝ち越し点が生まれた。「ボールが取れた時に勝ちかなと思った」。冷静な判断が光った。

さらに3分後、今度は右サイドからニアへ鋭いクロスボールを入れ、オ・セフンの頭での追加点を演出した。「この試合に勝つかどうかで首位が変わる。大きな勝ち点」。表情一つ変えずに淡々と振り返った。

黒田監督が信頼してやまない「ゼルビアのヤリ」だ。「攻守にわたりチームには欠かせない。攻撃だけの選手にならず守備も堅実にやるし、ボールを奪ってもう1回出て行ける。本当にレベルが高い」。前半5分の先制点も、相手クリアボールを拾った平河がシュート性のパスを送ったものから。チーム全3点をアシストと強い存在感を見せた。

黒子に徹する。山梨学院大時代はストライカー。佐賀東高時代は全国的に無名だったが、フィジカルに磨きをかけて瞬発力が向上した。都大学1部リーグで3年連続得点王に輝き、夢のJリーガーへの道を切り開いた。「アシストより得点が好き」だが、黒田監督から「選択肢を多く持ってプレーするように」と指導され、判断力が磨かれた。フォア・ザ・チームの精神。結果的にプレーヤーとしての幅を大きく広げている。

U-23代表でも左右問わずウイングとして重宝される。22日のマリ戦でも先制点を決めており「代表でもゼルビアでもウイング次第でチームが変わる」とやりがいを感じている。過密日程もどこ吹く風。エネルギッシュな男は「チームのために走って貢献できればいい」。首位を走る町田はむろん、パリ切符を狙う日本にとっても欠かせない男となりそうだ。【佐藤隆志】

○…韓国人FWオ・セフンが、婚約者の見守る前で今季初ゴールから2点を挙げた。「うれしかった。いつもゴールを取るよ、と約束していたから」。清水から加入し、194センチの長身を生かしたターゲットマンとして最前線に君臨。開幕からレギュラーとして献身的だったが、5試合目にしてようやくストライカーとして結果を出した。「トレーニングから感覚も良かったし、やっていることが出せた」と満足そうに話した。

◆平河悠(ひらかわ・ゆう) 2001年(平13)1月3日、佐賀県鹿島市生まれ。明倫JSC-FCレヴォーナ-佐賀東高。高校時は普通に就職を考えていたが、3年時にインターハイに出場し、山梨学院大へ進学。22年に特別指定選手で町田加入。J1通算5試合1得点、J2通算52試合8得点。172センチ、70キロ

◆初昇格組の開幕無敗記録 J1初昇格の町田が開幕から4勝1分けと5戦負けなし。初J1で同5戦無敗は02年の仙台以来22年ぶり2チーム目の最長タイ記録。延長戦があったため、日本代表の森保監督が現役だった仙台が4戦目の延長勝ちを挟んで開幕5連勝を達成した。当時は2ステージ(S)制で、清水秀彦監督が率いて第1Sで9位。最終的に年間13位だった。